私が先ほど「少しずつでいいので、働き始めてみてください」とお伝えしたのは、実は心の仕組みとして、とても大切なことが隠れているからなんです。
人は、「自分には、どうすることもできない」と感じたとき、いちばん苦しくなります。
心理学では、これを無力感と呼びます。
収入がない、貯金も少ない、子どももいる。
そうやって「もう逃げ道がない」と思い込んでしまうと、心はどんどん縮こまって、考える力さえ奪われてしまうんです。
だから、ご主人のひどい言葉に、うまく言い返せなくなってしまう。
でも、それはあなたが弱いからでは、まったくないんですよ。
「選べない」という状況が、あなたを追い詰めているだけなんです。
あなたが「家を出る勇気が持てない」と感じるのも、あなたに勇気が足りないからでは、ないんですよ。
心が、選べる材料をまだ手にしていないから、足がすくんでいるだけなんです。
ここで効いてくるのが、「自分で稼げた」という、小さな実感です。
たとえ月に数万円でも、「私は、自分の力でお金を生み出せた」と分かった瞬間、心の中に、選択肢が一つ増えます。
選択肢が増えると、「いざとなっても、私はやっていける」という土台ができてきます。
この土台のことを、自己効力感といいます。
自己効力感が戻ってくると、不思議なことに、相手の言葉に振り回されにくくなっていくんです。
だから、受け取れるお金や支援を先に調べておくことも、同じように大切なんですよ。
「これだけは受け取れる」と数字で見えた瞬間、頭の中の霧が晴れて、ようやく先のことを、考えられるようになりますからね。
そして、あなたが今ぶつかっている本当の壁は、実は「離婚できるかどうか」では、ないのかもしれません。
本当に怖いのは、「ひとりで子どもを守れる自信が、まだ持てないこと」――そこなんですよね。
だからこそ、答えは大きな決断ではなく、小さな一歩の側にあるんです。
情報を一つ、調べてみる。
窓口に一度、電話してみる。
求人を一つ、眺めてみる。
その一歩ずつが、あなたの自信を、少しずつ育てていってくれます。
これを読んでくださっている、今まさに「逃げ道がない」と感じているあなたへ。
あなたは、家族のために、もう十分すぎるほど頑張ってきました。
その頑張れる力を、これからは、あなた自身とお子さんのために使っていいんですよ。
焦らなくて、大丈夫。
あなたには、ちゃんと選ぶ力があります。
その力を思い出すところから、そっと始めていきましょうね。