私が先ほど、「『一緒にいる意味がない』ではなく、『お互いの幸せのために』と二人で確認してくださいね」とお伝えしたのは、実は心の仕組みとして、とても大切なことが隠れているからなんです。
人の心というのは、出来事そのものよりも、その出来事に「どんな意味をつけたか」で、あとの感情が決まっていくんです。
同じ「離婚」という事実でも、「うまくいかなかった」「意味がなかった」という物語で締めくくると、心には後悔や、欠けたような感じが残りやすい。
でも、「お互いを思って選んだ、前向きな卒業だった」という物語で締めくくれば、まったく同じ出来事が、あたたかい記憶へと変わっていくんです。
だから、別れの理由を言葉にして確かめ合っておくことは、手続き以上に、これからのあなたの心を守る作業なんですよ。
そして、事務的なことはプロにお任せしましょう、とお伝えしたのにも、理由があります。
人は、大切なものごとに気持ちを深く注ぎこむほど、小さな行き違いにも心が揺れてしまうもの。
お金や書類の話に感情がからむと、本当は仲良く終われたはずの二人が、思わぬところでぶつかってしまうことがあるんです。
だからこそ、心を注ぐ場所と、淡々と片づける場所を、そっと分けてあげる。
それが、最後まであたたかい関係でいるための、静かな知恵なんですよ。
それから、もう一つ。
あなたは「愛情ではなく、家族としての情しか残っていない」とおっしゃいました。
でもね、その「情」は、決して愛より劣ったものではないんです。
十年をかけて、二人で静かに育ててきた、信頼のかたちなんですよ。
その情があるからこそ、憎み合うことなく、お互いを思いやりながら次へ進もうとできている。
それは、とても幸せなことだと、私は思います。
そして、あなたが今感じている「不安」も、どうか責めないであげてくださいね。
先の見えない場所に足を踏み出すとき、心が揺れるのは、あなたが自分の人生を大切にしている証なんですから。
これを読んでくださっている、静かに人生の岐路に立っているあなたへ。
別れることは、これまで積み重ねてきた時間を否定することではありません。
「結婚してよかった。そして、離婚してよかった」
その両方を、心から言える日は、ちゃんとやってきますからね。
焦らなくて、大丈夫ですよ。