私が先ほど「あなたは何も悪くないんです」と繰り返しお伝えしたのは、実は心の仕組みとして、とても大切なことが隠れているからなんです。
人には、「見てしまった」というだけで、罪悪感を抱いてしまう性質があります。
これは傍観者の罪悪感とも呼べるもので、本当は何もしていないのに、その場に居合わせただけで、自分まで加害者側になったような感覚に襲われてしまうんです。
あなたが今、しんどさを感じているのは、先輩の冷たい態度そのものだけではないのかもしれません。
本当にあなたの心をざわつかせているのは、「知ってしまった自分」への、居心地の悪さなんです。
自分は何も悪くないと分かっているのに、なぜか胸の奥がすっきりしない。
その正体は、この居心地の悪さだったりするんですね。
そして、もう一つ。
先輩があなたを無視したり睨んだりするのは、あなたが憎いからではないことが、とても多いんですよ。
それは、「見られてしまった」という恥ずかしさや恐れが、攻撃という形に姿を変えているだけなんです。
人は、自分の隠しておきたいところを知られたと感じたとき、とっさに相手を遠ざけようとしてしまうものなんです。
つまり、あの敵意は、あなたに向けられているようでいて、実は先輩自身の動揺の裏返しなんですね。
きっと先輩も、心のどこかで落ち着かない日々を過ごしていらっしゃるのだと思います。
そう思うと、ほんの少しだけ、肩の力が抜けませんか。
あなたが先回りして謝ったり、言い訳をしたりする必要は、ないんです。
むしろ、いつも通り、淡々と挨拶を続けていらっしゃるあなたのほうが、ずっと誠実なんですよ。
時間というのは不思議なもので、あんなに張りつめていた空気も、少しずつ角がとれていくものですから。
これを読んでくださっている、優しくて、まじめなあなたへ。
人の秘密を偶然知ってしまったとき、心がこんなにもざわつくのは、あなたが人を大切に思える人だからなんです。
どうか、そのやわらかい心を、自分を責めるためには使わないでくださいね。
記録を残しておくのは、誰かと戦うためではなく、あなた自身をそっと守るお守りのようなもの。
それを持っているというだけで、心はふっと軽くなるものですから。
焦らなくて、大丈夫ですからね。