私が先ほど『ご主人だけを一方的に責めるのは、少し難しいのかもしれない』とお伝えしたのは、実は心の仕組みとして、とても大切なことが隠れているからなんです。
人は、自分の中にある不安や寂しさを認めるのが、とても苦手なんですね。
だから、その苦しさを『相手が悪い』という形に変えて、外に出そうとすることがあります。
心理学では、これを投影と呼んだりします。
自分でも気づかないうちに、見たくない気持ちを、相手の姿に映して見てしまう、ということなんですね。
『許せない』という強い怒りの裏側には、多くの場合『本当は分かってほしかった』という悲しみが、静かに隠れているんです。
今回のご相談で、本当にぶつかっているのは、浮気かどうか、という事実ではないのかもしれません。
ぶつかっているのは、お二人がそれぞれ抱えていた、満たされなさなんです。
あなたがアプリで誰かとの会話を楽しんでいたとき、心のどこかが、少しだけあたたかくなっていたはずです。
それはきっと、日々の暮らしの中で、いつのまにか冷えていた場所があったからなんですね。
ご主人もまた、同じように、どこかが冷えていたのかもしれません。
同じ屋根の下にいながら、二人とも、別の場所に小さなぬくもりを探しに行っていた。
そう考えると、これは責め合う話ではなくて、すれ違ってしまった二人の、さみしさの物語なのかもしれませんね。
証拠を突きつけて相手を追い詰めても、その冷えた場所は、あたたまらないんです。
むしろ、二人の間の距離が、もっと広がってしまうことのほうが多いんですよ。
これを読んでくださっている、今まさに怒りで胸がいっぱいの、あなたへ。
その怒りは、あなたが本気で、この関係を大切に思っている証拠でもあるんです。
どうでもいい相手には、人はここまで怒れないものですからね。
だからどうか、その怒りの奥にある、あなた自身の寂しさにも、そっと目を向けてあげてくださいね。
自分の寂しさに気づいてあげられた人だけが、相手の寂しさにも、そっと手を伸ばせるようになるんです。
問い詰めるための言葉ではなく、『私、少し寂しかったんだ』という一言から始めてみる。
それだけで、閉じかけていた扉が、もう一度開くこともあるんです。
焦らなくて、大丈夫ですからね。