私が先ほど『その胸のときめきは、今の暮らしに刺激が足りないサインかもしれない』とお伝えしたのは、実は心の仕組みとして、とても大切なことが隠れているからなんです。
私たちは、目の前の人そのものに惹かれているようでいて、本当は『その人に映し出した理想』に惹かれていることが、とても多いんです。
学生時代の憧れの先輩は、手が届かなかったぶん、あなたの心の中で、いちばん美しい形のまま止まっています。
日々の疲れも、現実の些細なぶつかり合いも、そこには映っていません。
だから、まぶしく見えるんですね。
でも、そのまぶしさは先輩の実像というより、あなたが長い時間をかけて心の中で磨いてきた『夢』のほうなんです。
そして、その夢が急に輝いて見えたということは、裏を返せば、今のあなたの毎日が、ほんの少しだけ色を失いかけているのかもしれません。
本当にぶつかっているのは、先輩と家庭のどちらを選ぶか、ではないんです。
満たされない何かを、外側の刺激で一気に埋めたいのか、それとも自分の暮らしの中で、もう一度育て直していくのか。
ぶつかっているのは、そこなんですよ。
外からの刺激は、その場ではよく効きます。
でも、効き目が切れたあとには、前よりも大きな渇きが残ってしまうことが多いんです。
だからといって、何か大きなことをしなければいけない、というわけではないんですよ。
奥さまと二人で、なんでもない話をしながらお茶を飲む時間でも、一人で好きな音楽をゆっくり聴く夜でも、いいんです。
『自分の心が、今ちょっと乾いているな』と気づいて、その渇きに小さな水を与えてあげること。
それだけで、外の刺激をまぶしく感じる気持ちは、少しずつやわらいでいきます。
そうして心が少しずつ潤っていくと、家庭の外に答えを探しに行かなくても、ちゃんと穏やかでいられるようになるんです。
これを読んでくださっている、後ろめたさと興奮の間で揺れている、あなたへ。
揺れてしまったことを、どうか責めないでくださいね。
揺れたからこそ、あなたは自分の心が少し渇いていることに、気づけたんです。
その気づきを、家庭の外にではなく、あなたの毎日の中に、そっと返してあげてほしいんです。
焦らなくて、大丈夫ですからね。