私が先ほど「嘘の奥に、ご主人なりの遠慮が隠れているかもしれない」とお伝えしたのは、実は心の仕組みとして、とても大切なことが隠れているからなんです。
人が嘘をつくとき、その動機は、大きくふたつに分かれることが多いんです。
ひとつは、相手を傷つけてやろうという悪意。
もうひとつは、責められたくない、がっかりされたくない、という「自分を守るための不安」なんです。
今回のご主人の嘘は、おそらく後者ではないでしょうか。
仕事だと言っておけば、波風が立たない。
そんなふうに、その場をやり過ごすための、少し弱くて不器用な嘘だったのかもしれません。
そしてもうひとつ、そっと思い出してみてほしいことがあります。
普段の何気ないやり取りの中で、ご主人が実家に行くことを、あまり歓迎していないような空気が、どこかに漂っていなかったでしょうか。
これは、あなたを責めたいのではありません。
人は、そういう空気を感じ取ると、正直に言うよりも、隠すほうをそっと選んでしまうことがあるんです。
つまり、おふたりが本当にぶつかっているのは、「実家に行った」という出来事そのものではないんですね。
本当にぶつかっているのは、「正直に話せる関係になれているかどうか」という、もっと奥の部分なんです。
嘘をつかれると、私たちはつい「何をしたのか」を問い詰めたくなります。
でも、そこばかりを追いかけていると、相手はますます口を閉ざしてしまうんです。
大切なのは、「どうして言えなかったのかな」と、その気持ちのほうへ、そっと目を向けることなんですよ。
もちろん、嘘をつかれた悲しみは、決して小さなことではありません。
その痛みを、どうか「私が大げさなのかな」なんて、思わないでくださいね。
そして同時に、覚えていてほしいことがあるんです。
相手が正直になれるかどうかは、相手の性格だけで決まるのではなく、ふたりの間に流れる空気でも決まっていく、ということを。
「責めないよ」という安心が伝わったとき、人は初めて、本当の気持ちを差し出せるんです。
育児に追われる毎日の中で、そこまで気を回すのは、簡単なことではありません。
だから、今すぐ完璧な話し合いをしようと、気負わなくて大丈夫ですよ。
まずは、あなた自身の「嫌だったな」という気持ちを、ゆっくり休ませてあげてください。
焦らなくて、大丈夫ですからね。