私が先ほど、『やめて、やめてと言えば言うほど、かえって心を閉じてしまう』とお伝えしたのは、実は心の仕組みとして、とても大切なことが隠れているからなんです。
人は、正しいことを言われたとき、いつも素直にうなずけるとは限りません。
むしろ『自分のやり方を否定された』と感じた瞬間に、心にぎゅっと蓋をして、ますます頑なになってしまうことがあるんです。
ご主人にとってのタバコは、きっと、ただの習慣ではなく、張りつめた一日の中で、ようやくほっと息をつける、数少ない居場所なのかもしれません。
だからこそ、それを取り上げられそうになると、自分の逃げ場そのものを否定された気がして、つい身構えてしまう——そんな一面もあるのだと思います。
ご主人の『別々に暮らすか』という言葉も、本当は『別れたい』のではなくて、『これ以上責められたくない』という、防御の合図なのかもしれません。
つまり、ここで本当にぶつかっているのは、タバコそのものではないんですね。
『やめてほしい』というあなたの願いと、『自分を否定されたくない』というご主人の気持ち。
この二つの心が、タバコを間にはさんで、すれ違ってしまっているんです。
だからこそ、正論の綱引きから、そっと降りてみることが大切なんですよ。
信頼できる誰かの口から伝えてもらったり、黙って別の部屋へ移る姿を見せたりするのは、ご主人を『敵』にしないための、やさしい工夫なんです。
人というのは、正しい言葉で説き伏せられるよりも、目の前で見た景色のほうに、そっと心を動かされることがあるんですよ。
責める相手ではなく、いっしょに考える相手でいられたとき、人の心は少しずつ動きはじめます。
そして、大切なご家族を守ろうと、毎日がんばっているあなたへ。
くり返しお願いしても届かないと、『私の伝え方が悪いのかな』と、つい自分を責めてしまうかもしれません。
でも、届かないのは、あなたの愛情が足りないからでは、決してないんです。
ただ、心には心の順番があって、今はまだそのタイミングを待っているところ、ということもあるんですよ。
焦らなくて、大丈夫ですからね。
あなたが娘さんを守ろうとしているその気持ちは、時間をかけて、きっとご主人にも伝わっていきますから。