私が先ほど『わざわざ言い訳をしないといけない関係は、もうグレーなんです』とお伝えしたのは、実は心の仕組みとして、とても大切なことが隠れているからなんです。
人は、本当に後ろめたさがまったくないとき、言い訳を必要としません。
『これはただの友情だ』とわざわざ確かめたくなるのは、心のどこかが『そうじゃないかもしれない』と、小さく揺れているからなんですよ。
これを、心理学では認知的不協和と呼んだりします。
自分の行動と、自分の中の『こうありたい』という気持ちがズレたとき、人はそのズレを埋めるために、都合のいい理由を探してしまうんです。
『既婚者同士だから安心』という言葉は、まさにその、心のすき間を埋めるための魔法の言葉なんですね。
『安心』という言葉を口にするほど、本当は少しずつ縮まっている距離から、そっと目をそらしていられるんです。
そしてもうひとつ。
私が『奥さまに話していない、その事実そのものがサインなんです』と申し上げたのには、理由があります。
秘密というのは、二人だけの世界を作ってしまうんです。
『これは私たちだけが知っていること』——そう感じた瞬間、その相手との間に、特別な親密さが生まれてしまう。
つまり、隠すという行為そのものが、関係をより濃く、より抜けにくいものにしていくんですよ。
奥さまと分け合えない秘密が増えるほど、その人だけと分け合える時間が、心の中で少しずつ居場所を広げてしまうんですよ。
だからこそ、まだ何も起きていない今、立ち止まる意味があるんです。
そして、本当にぶつかっているのは、彼女への気持ちそのものではないのかもしれません。
『日常の中で、誰かに特別に見てもらえた』という、あの温かい感覚。
それを手放したくない気持ちと、大切な家庭を守りたい気持ち。
その二つの間で、あなたの心は静かに揺れているんです。
どちらもあなたの本当の気持ちですから、どちらかを悪者にする必要はありませんよ。
これを読んでくださっている、心のどこかでドキッとした経験を持つ、まじめなあなたへ。
心が動いてしまったこと自体は、罪ではないんです。
大事なのは、そのあとに、あなたがどう選ぶか、ただそれだけなんですよ。
自分を責めないでくださいね。
こうして気づけたあなたなら、きっと大丈夫ですから。