私が先ほど『奥さまの心が、今も傷から回復できずに悲鳴をあげ続けている』とお伝えしたのは、実は心の仕組みとして、とても大切なことが隠れているからなんです。
裏切りという出来事は、ただ悲しい、というだけの出来事ではないんです。
それは、『この人は大丈夫』『この家庭は安全だ』という、心の一番奥にあった安心の土台そのものを、崩してしまう出来事なんですね。
そして、その土台を大切にしていた人ほど、崩れたときの揺れは、大きくなります。
奥さまが10年経った今も苦しんでいらっしゃるのは、それだけあなたとの家庭を、本気で信じていらしたということでもあるんです。
一度この土台が崩れると、心は『また同じことが起きるかもしれない』と、四六時中、警戒し続けるようになります。
奥さまが一日に何度も電話をかけたり、お店にまで確認をしたりするのは、あなたを困らせたいからではありません。
『今この瞬間、裏切られていないか』を確かめないと、不安で心がもたない。
そういう、必死の状態なんです。
つまり、本当にぶつかっている相手は、あなたではないんですよ。
奥さま自身の中にある、『また失うかもしれない』という、消えない恐怖なんです。
そして、ここがとても切ないところなのですが、この恐怖は、確認すればするほど、かえって強くなってしまうんです。
確認して安心できるのは、ほんの一瞬。
すぐにまた不安が押し寄せて、また確認せずにはいられなくなる。
この繰り返しから、ご本人の力だけで抜け出すのは、本当に難しいことなんですね。
だからこそ、責めるのでも、ただ耐えるのでもなく、専門家という第三者の手を借りることが、結果としてお二人を守る道になるんです。
これを読んでくださっている、過去の過ちを背負い、それでも家庭を守ろうと歯を食いしばってきた、あなたへ。
あなたが誠意を尽くしてきた10年は、決して無駄ではありません。
ただ、愛情と誠意だけでは癒せない傷も、この世界にはあるんです。
それは、あなたの努力が足りないからではありません。
傷の手当てには、ちゃんとした手当てのやり方がある、というだけのことなんですよ。
どうか、お一人で、そしてお二人だけで、抱え込まないでくださいね。
焦らなくて、大丈夫ですからね。