私が先ほど「お互いにスタンダードが違うんだな、と思う程度でやっていく」とお伝えしたのは、実は心の仕組みとして、とても大切なことが隠れているからなんです。
夫婦がぶつかるとき、争っているのは、たいていゴミや日用品そのものではありません。
本当にぶつかっているのは、「自分のやり方を否定された」という、心の痛みのほうなんです。
あなたが「どうして気にしないの」と言うとき、あなたの中には「ちゃんとしてほしい」という願いがあります。
でも奥さまの耳には、それが「あなたのやり方は間違っている」という否定として届いてしまうことがあるんです。
だから「当たり前を押し付けないで」と、思わず身を守る言葉が出てくる。
これは、意地というより、心が傷つかないための反射なんですね。
そして、同じことがあなたの側にも起きています。
「気にするなら自分でやって」と言われたとき、あなたもまた、自分の気遣いを否定されたように感じて、傷ついていらっしゃるはずなんです。
つまりお二人は、どちらも「分かってほしい」「認めてほしい」と願っているのに、それが正しさのぶつかり合いに姿を変えてしまっている。
これが、多くの夫婦が同じ場所で立ち止まってしまう理由なんですよ。
だからこそ、「どちらが正しいか」を決める土俵から、いったん降りることが力になります。
正しさを競うのをやめると、不思議と、相手の頑張りのほうが見えてくるんです。
先に力を抜くのは、あなたが負けることではないんですよ。
どちらが正しいかを競う場所から、そっと離れられる、ということなんです。
そして、もうひとつ。
あなたが感じているその不安は、あなたが奥さまとの関係を、まだ諦めていない何よりの証拠でもあるんですよ。
どうでもいい相手になら、人はここまで悩みませんからね。
会話がなくなり、営みも遠ざかってしまったのも、長いあいだ二人で正しさの綱を引き合って、お互いにくたびれてしまったからなのかもしれません。
これを読んでくださっている、まじめで、家族を大切にしたいあなたへ。
違いは、必ずしも「合わない」ということではありません。
違いを抱えたまま、それでも並んで生きていく夫婦は、たくさんいます。
まずは、あなた自身が張りつめてきた肩の力を、そっと緩めてあげてくださいね。
焦らなくて、大丈夫ですからね。