私が先ほど、「これはお金の問題以上に、心の痛みなのだ」とお伝えしたのは、実は心の仕組みとして、とても大切なことが隠れているからなんです。
私たちは、お金や出来事そのものに傷つくというより、その裏にある「自分の扱われ方」に傷つくものなんですよ。
退職金という大きなお金を、あなたに一言もなく使ってしまった。
その事実が突きつけたのは、「あなたは、相談する相手だと思われていなかった」という、存在を軽んじられたような感覚です。
本当にぶつかっているのは、お金の使い道ではなくて、「私は、この人にとって大切な存在なのだろうか」という、心の奥の問いなんです。
だからこそ、こんなにも胸が苦しいんですよね。
そして、もう一つ。
人は、相手が「いつか変わってくれるはず」と期待している間、いちばん長く傷つき続けてしまうものなんです。
期待するたびに裏切られ、そのたびに「どうして」と、心がすり減っていく。
長い年月、あなたが抱えてこられた疲れは、きっとここから生まれているのだと思います。
でもね、相手を変えることを手放すというのは、あきらめて負けることでは、決してないんですよ。
「この人は、こういう人なのだ」と、静かに事実として受け止める。
それは、あなたの心を、これ以上すり減らさないための、優しい線引きなんです。
先ほど、財産をきちんと分けてもらう、区切りをつける、という道もお話ししましたよね。
ああいうお話をすると、「今さら波風を立てるなんて」と、かえってご自分を責めてしまう方が、とても多いんです。
でもね、それは決して、仕返しでも、冷たさでもないんですよ。
自分が受け取るべきものを、きちんと受け取る。
それは、これまで家族のために差し出してきたご自分を、最後にちゃんと大切にしてあげる、という行いなんです。
期待を手放したぶんだけ、あなたの心には、少しずつ余白が生まれます。
その余白は、これからは、あなたを本当に大切に思ってくれる人たちのために使ってあげてほしいんです。
これを読んでくださっている、長いあいだ、家族のために自分を後回しにしてきたあなたへ。
あなたは、もう十分すぎるほど、がんばってこられました。
これからの時間まで、誰かに我慢をさせられる必要は、どこにもないんですよ。
娘さんやお孫さんと過ごす、あたたかい時間の中で、あなたの張りつめた心が、ゆっくりとほどけていきますように。
焦らなくて、大丈夫ですからね。
あなたの人生の主役は、いつだって、あなた自身なのですから。