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『私には、幸せになる資格なんてない』発達障害の家族を隠し続ける私の、息の詰まる恋

「いつ親御さんに挨拶しに行こうか?」

スマホの画面に光る彼からのLINE通知を見て、私は深く、重いため息をついた。

画面をタップすることもできず、ただ暗くなるディスプレイを見つめ続ける。部屋の空気までが、どんよりと淀んでいくように感じた。

私の家族は、少しだけ「普通」とは違う。 父と弟はADHD、姉はADHDと発達障害を併発している。実家はいつも散らかっていて、感情の起伏が激しい姉の叫び声が響くことも珍しくない。

幸い私自身に特性は出なかったけれど、もし子供を産んだら、遺伝してしまうのではないか。その不安が、いつも私の首を真綿のように締め付けている。

それに、親がいなくなったら、姉のサポートは誰がするの? 結局、私がすべてを背負うことになる。その未来を想像するだけで、目の前が真っ暗になった。

隠し続ける罪悪感と、膨らむ孤独

彼とはもう1年付き合っている。優しくて、いつも私を気遣ってくれる温かい人だ。 でも、家族のことは何も話せていない。

「本当の私」を知ったら、彼はどう思うだろう。

彼自身だけでなく、彼のご家族だって、こんな重い背景を持つ女との結婚なんて絶対に反対するに決まっている。引かれてしまうのが怖くて、腫れ物に触れるように、家族の話はいつも適当に濁してきた。

私みたいな人間が、結婚なんて夢見ちゃいけないんじゃないか。子供を持って、温かい家庭を築くなんて、身の丈に合わないワガママなんじゃないか。

夜の静寂の中、ベッドに横たわると、涙がツーツーとこめかみを伝ってシーツに吸い込まれていく。

誰にも言えない孤独が、私を深い海の底へと引きずり込んでいくようだった。

夜の訪問者と、猫の非常識な教え

「フン、湿っぽい部屋だニャ」

突然、耳元で野太い声がした。 驚いて飛び起きると、開け放した窓の枠に、ふてぶてしい顔つきのちょっと太めの猫が座っていた。首には「フク」と書かれた古びた首輪がついている。

「えっ……しゃ、しゃべった?」

「お前のそのジメジメしたオーラが外まで漏れてて、マグロの夢から覚めちゃったニャ。迷惑な女だニャ」

幻覚でも見ているのだろうか。でも、私は誰かに聞いてほしくて、思わずぽつりぽつりと、自分の抱える重い家族の事情を吐き出していた。

私が結婚なんて望んではいけないこと。自分の環境が特殊すぎること。

フクは後ろ足で首のあたりをボリボリと掻きながら、鼻で笑った。

「お前、自分のこと悲劇のヒロインだと思ってないかニャ? 『特別な環境』って、ずいぶん自意識過剰だニャ

「えっ……」

「猫の世界じゃ、親が誰だか知らないのも、兄弟と生き別れるのも普通だニャ。ニンゲンの家族だって、どいつもこいつも何かしらポンコツだろ。完璧な環境なんて、どこにもないニャ

フクはベッドに飛び降り、私の膝の上で香箱座りを作った。そのずっしりとした重みと温もりが、冷え切った心にじんわりと伝わってくる。

「お前は、家族のせいにしながら、自分が傷つくのを怖がって逃げてるだけニャ。今手元にあるカードで、どう幸せになるか考えるしかないんだニャ。お前が幸せになるのに、誰の許可もいらないニャ」

そう言うと、フクは大きなあくびをして、また窓からぬるりと暗闇へ消えていった。

「今あるカードで……」

私はスマホを手にとった。 魔法のように不安がすべて消えたわけじゃない。彼に話すのはやっぱり怖い。

でも、自分の環境を特別視して、勝手に幸せを諦めるのは、もうやめよう。

少しだけワガママに、自分の幸せを欲張ってもいいのかもしれない。私は、深呼吸をして、彼への返信を打ち始めた。

登場人物紹介:フク

フク

おう、俺の名前は「フク」だニャ。
たまお悩み相談室のWEB小説に、気まぐれでふらりと現れる猫だニャ。
ちょっと太めでふてぶてしい顔? うるさいニャ、これが俺のベスト・フォルムなんだから放っておけニャ。

俺の生き方は究極の「自分ファースト」だニャ。
美味しいおやつをもらった時しか喉は鳴らさないし、愛想笑いなんて絶対にしない。人間の社会にある「こうあるべき」とか「いい妻・いいお母さんでいなきゃ」なんていう謎のルール、俺たち猫には一切関係ないニャ。

なんで俺がアンタの前に現れるかって?
他人の顔色ばっかり伺って、自分を押し殺してボロボロになってる人間を見ると、なんだか見ててイライラするからだニャ。「自己犠牲」なんていう重たいもん背負ってるアンタに、俺が身も蓋もないツッコミを入れてやるニャ。

人間ってほんと、面倒くさい生き物だニャ。
嫌な時は噛む、寝たい時は寝る。それで嫌われるなら上等だニャ。アンタも俺みたいに、ガチガチに固まった肩の力を抜いて、もうちょっとワガママに生きてみろニャ🐾

※本記事は、「たまお悩み相談室」に寄せられた相談をもとに、相談者の個人が特定されないよう変更を加えながら構成しています。

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