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『お前が精神科に行け!』モラハラ夫と息子の板挟みで、海外の広い家で息を殺す私

終わらない怒声と、異国の冷たい空気

「だからお前は駄目なんだ!」
「うるせえよ、クソ親父!」

広いリビングに響き渡る夫の低い怒声と、それに反発する10代の息子の甲高い叫び声。 ここ数年、我が家の日常風景だ。

海外赴任を機に買ったこの家は、外から見れば誰もが羨むような立派な作りをしている。 けれど、一歩足を踏み入れれば、空気は氷のように冷たい。

息子が少しでも口答えをすると、モラハラ気質の夫は容赦なく力でねじ伏せようとする。 見かねた私が「煽るのはやめて」と割って入ると、今度は夫の怒りの矛先が私に向く。

「お前が甘やかすからこうなったんだ!お前がおかしいんだよ、精神科にでも行け!」

どうしていつも私が責められなければならないの。

胃の奥がギュッと締め付けられ、暗いスマートフォンの画面に映る自分の疲れた顔を見つめながら、私は深いため息をこぼした。

離婚のトラウマと、誰にも言えない孤独

この負のループが始まって、もう5年以上が経つ。

藁にもすがる思いで現地のカウンセラーに相談したこともあったけれど、文化の違いからか、「なぜそこまで干渉するの?」と不思議そうな顔をされるだけで、私の苦しみは誰にも理解されなかった。

正直、夫に対する愛情なんてとうの昔に冷めきっている。 残っているのは軽蔑だけ。

それなら別れればいい。 頭では分かっているのに、私はどうしても身動きが取れずにいた。

私には一度、離婚歴がある。 あの時に味わった身を切るような孤独と、明日が見えない生活の恐怖を思い出すと、どうしても足がすくんでしまうのだ。

それに、普段の息子は夫と仲良くテレビを見て笑い合ったりもしている。

「私さえ我慢すれば、家族の形は保てる」。 そう自分に言い聞かせる日々は、少しずつ私の心を削り取っていた。

自分勝手な闖入者と、心の呪縛を解く一言

「バカだニャあ、お前。勝手に首を突っ込むから火の粉を被るんだニャ」

ふと声がして視線を落とすと、テーブルに置いた私のスマートフォンの上に、ふてぶてしい顔つきの丸々と太った猫がどっかと座り込んでいた。

いつの間に現れたのか、その猫は私の画面を遠慮なく踏みつけながらゆったりと尻尾を揺らしている。

「えっ……? どこから……って、ちょっと私のスマホ……」

「吾輩はフクだニャ。画面より吾輩を見るニャ。いいか、お前。あいつらの喧嘩はあいつらのエンタメだニャ。放っておけばいいんだニャ。お前がわざわざ舞台に上がって、サンドバッグになってやる義理はないニャ」

「でも、私が止めないと息子が……」

「お前のコントロール外だニャ。自分の機嫌くらい自分で取らせろニャ」

フクはスマホの上で大きなあくびを一つして、ジロリと私を見据えた。

「それよりお前、そんなに見下してくるオスと、本当に一生添い遂げたいのかニャ? 過去の失敗が怖いだけで、今の自分を粗末にしてるんじゃないかニャ?」

その言葉に、私はハッとした。

「二人の問題」を私が解決しなきゃと思い込んでいた。 そして、「二度目の離婚はダメだ」という世間体や過去の恐怖に縛られて、自分を一番痛めつけていたのは、他でもない私自身だったのだ。

「吾輩みたいに、もっと自分ファーストで生きろニャ。お前はどうしたいんだニャ?」

フクがふらりとソファの陰へ歩いていき姿を消した後も、その言葉は私の胸に温かく残っていた。

リビングからはまだ怒声が聞こえる。 けれど、私はもうそこへは行かない。

そっと寝室のドアを閉め、私は久しぶりに、自分だけの静かな時間のために紅茶を淹れることにした。

登場人物紹介:フク

フク

おう、俺の名前は「フク」だニャ。
たまお悩み相談室のWEB小説に、気まぐれでふらりと現れる猫だニャ。
ちょっと太めでふてぶてしい顔? うるさいニャ、これが俺のベスト・フォルムなんだから放っておけニャ。

俺の生き方は究極の「自分ファースト」だニャ。
美味しいおやつをもらった時しか喉は鳴らさないし、愛想笑いなんて絶対にしない。人間の社会にある「こうあるべき」とか「いい妻・いいお母さんでいなきゃ」なんていう謎のルール、俺たち猫には一切関係ないニャ。

なんで俺がアンタの前に現れるかって?
他人の顔色ばっかり伺って、自分を押し殺してボロボロになってる人間を見ると、なんだか見ててイライラするからだニャ。「自己犠牲」なんていう重たいもん背負ってるアンタに、俺が身も蓋もないツッコミを入れてやるニャ。

人間ってほんと、面倒くさい生き物だニャ。
嫌な時は噛む、寝たい時は寝る。それで嫌われるなら上等だニャ。アンタも俺みたいに、ガチガチに固まった肩の力を抜いて、もうちょっとワガママに生きてみろニャ🐾

※本記事は、「たまお悩み相談室」に寄せられた相談をもとに、相談者の個人が特定されないよう変更を加えながら構成しています。

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