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「ないところからは取れません」40年耐えたDV夫に全財産を奪われ、私が選んだ道

40年の我慢と、ゼロになった通帳の残高

色褪せた通帳の最終ページを見つめながら、私は音の出ない悲鳴を上げた。記帳された残高は、無残にもほとんどゼロに近かった。

結婚して40年。夫からの金銭的、性的、精神的なDVにひたすら耐え続けてきた。

私には帰る実家がない。いわゆる「毒親」のもとで育ち、「自分が大切にされる」という感覚すら知らないまま大人になった。だから、どれだけ罵倒されても、生活費を渡されなくても、必死に働いて一人で家事と育児をこなすのが当たり前だと思い込んでいた。

夫は個人事業主で年金も少なく、退職金もない。老後の不安から、私は自分の食事すら切り詰めて少しずつお金を貯めてきた。それなのに。

「そんなうまい話があるわけない、やめて!」という私の必死の説得を鬼の形相で無視し、夫はあろうことか詐欺に引っかかった。

私が血を吐くような思いで守ってきたお金は、夫の愚行によって一瞬にして泡と消えた。

暗いリビングに響く夫の大きないびきを聞きながら、私の心の中で、何かが完全に音を立てて崩れ落ちた。

「ないところからは取れません」冷たい現実と深い孤独

これ以上、この男と一つ屋根の下にいるのは限界だった。震える手でスマホを握りしめ、無料の法律相談に電話をかけた。私が受けた長年の苦痛、そして奪われたお金。少しでも慰謝料をもらって、家を出たい。

しかし、電話口の弁護士から告げられたのは、あまりにも冷酷な現実だった。

「お気持ちはわかりますが、ご主人に資産がない以上、ないところからお金は取れません」

通話が切れた後、スマホの真っ黒な画面に映る自分の皺の刻まれた顔を見て、ポロポロと涙が溢れた。

私は、たくさんのお金が欲しいわけじゃない。ただ、怯えることなく、自由に心が休まる最低限度の暮らしがしたいだけなのに。

それすらも、私には許されないのだろうか。頼る身内もおらず、お金もない。

40年間、ただ耐えることしかしてこなかった私には、逃げ出す力すら残されていないように思えて、深い孤独が私を包み込んだ。

過去を捨てて、自分の足で歩き出すための第一歩

冷たいフローリングに座り込み、どれくらい時間が経っただろうか。窓の外が白み始め、朝の冷たい空気が頬を撫でた。

ふと、考えがクリアになっていくのを感じた。 夫から慰謝料を「取る」ことに執着している限り、私はあの男に縛られ続ける。資産がないなら、もう執着するのはやめよう。

夫から奪い返すのではなく、社会の窓口を頼ればいい。DVから逃れるための公的な支援や、生活を立て直すための手立てが何かあるはずだ。

「ない」ものばかりに目を向けて絶望する時間は終わった。私はまだ、自分の足で歩ける。

社会の援助を受けながら、もう一度自分で働いて生活を立て直す。私が『幸せになる』と決めさえすれば、道は必ず開けるはずだ。

40年間の地獄のような過去は、もうこの薄暗い部屋に置いていこう。

まずは、私の今の窮状を聞いてくれて、一緒に逃げる方法を考えてくれる公的な相談窓口を探してみよう。

まだ見ぬ「安心できる未来」へ向けて、私はゆっくりと、けれど確かに顔を上げた。

※本記事は、「たまお悩み相談室」に寄せられた相談をもとに、相談者の個人が特定されないよう変更を加えながら構成しています。

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