姉のSNSと、通帳の引き落とし履歴
仕事の合間にふと開いたSNS。タイムラインのトップに、専業主婦である一番上の姉が得意げに載せた写真が目に飛び込んできた。
「じぃじとばぁばからのプレゼント!」という文字と共に写る、甥っ子の真新しい高級ランドセルと、笑顔の親たちの姿。 スマホの画面を見つめる私の口から、乾いた笑いが漏れた。
同じ親から生まれた兄弟なのに、私と姉とでは背負っている「奨学金」の額に550万円以上の差がある。親の経済状態が悪化したタイミングで大学に入った一番下の私だけが満額の借金を背負わされ、仕送りはゼロ。学生時代から生活費のためにバイト漬けで、今もたった一人で毎月数万円の返済を続けている。
「兄弟でこんなに差があるなら、いっそ産まないでほしかった」
ドス黒い恨みが、また胃の奥で渦を巻いた。大学なんて行かなければよかったという過去への後悔で、胸が締め付けられる。
借金と孤独しか与えられなかった私
20代で自営業を立ち上げ、返済のために血を吐くような思いで必死に働いてきた。しかし、サラリーマンだった父には「堅実に生きろ」と猛反対され、ほとんど絶縁状態だ。
コロナ禍で仕事が激減し、明日食べるものにも困るほど追い詰められた時でさえ、実家から心配の連絡はただの1つも来なかった。
それなのに、親に甘えるのが上手い姉は、今もこうして親からの手厚い加護を受け、孫にまで貢いでもらっている。
親の愛情もお金も、すべては要領のいい姉のもの。私に与えられたのは、多額の借金と孤独だけだった。
パソコンのブルーライトに照らされた薄暗い部屋の中、一人きりで電卓を叩く。どうして私ばかりが、こんな理不尽な目に遭わなければならないのだろう。普通の家庭に生まれたかったと、やり場のない悲しみで目の前が真っ暗になる日々を繰り返していた。
理不尽が育てた「誰にも奪えない力」
重い頭を抱えながら、ふとデスクの横に積まれた仕事の資料や、これまで一人で返済を続けてきた通帳の束に目を落とした。
……待てよ。
姉は親からの手厚い援助がなければ成り立たない、誰かの力添えが常に必要な人生を歩んでいる。でも、私はどうだ?
親に一切頼ることなく、たった一人でこの厳しい自営業の世界を生き抜き、何百万という借金を自分の力だけで返し続けている。
「自立して生きる力」
——もしかして、私の中にあるこの底力こそが、誰の助けもなかったからこそ得られた、最大の財産なのではないか。
親から甘やかされなかった、平等じゃなかったと嘆くのはもうやめよう。私には、誰の加護もなくても自分の足で力強く歩いていける「生きる能力」がある。
理不尽な環境が私を強くしたのだとすれば、この生命力だけは誰にも奪えない私の誇りだ。 夜明け前の冷たい空気を胸いっぱいに吸い込み、私は静かにパソコンのキーボードに指を置いた。まだ返済は続くけれど、私の人生は、私が切り拓いていく。







