結論
更年期うつは、誰にでも起こり得る心と体の揺らぎです。涙が止まらない、何もやる気がしない、イライラが抑えられない――そのつらさは「気のせい」ではありません。たくさんの女性が同じように悩み、声にならない想いを抱えています。今のあなたの状態にも、ちゃんと意味があります。
対策
①自分の変化を「おかしい」と否定せず、認めてあげることから始める
②「ひとりで抱えない」ことを意識し、誰かに話す勇気を持つ
③小さな回復のサインを見逃さず、できていることに目を向ける
「急に涙が出て止まらない」「家族に当たってしまって自己嫌悪…」「朝、起きるのがつらい」
そんなふうに感じているあなたへ。
更年期はホルモンの変化だけでなく、心の揺らぎが大きくなる時期でもあります。
これまで当たり前にできていたことが、急にできなくなる。
それに気づくたびに、「こんな自分はおかしいのかな」と悩んでしまう――。

たま夫婦のお悩み相談室の代表カウンセラー、たまです。私は、夫婦関係や女性の心の悩みに寄り添うカウンセラーとして、これまで1,000件以上のご相談を受けてきました。誰にも言えない想いを受け止める“もうひとつの居場所”を目指して、日々お話を聞かせていただいています。
この記事では、実際に相談を受けた方の体験談をもとに、更年期うつのリアルと、そこから少しずつ回復していく過程をご紹介します。
読んでくださるあなたの心が、少しでも「ひとりじゃない」と感じられますように。
私がこれまでに受けた「更年期うつ」7つの体験談
更年期うつのご相談を受けるたびに、私は何度も「ひとりじゃない」と伝えたくなります。
一見元気そうに見えても、心の中では涙をこらえていたり、誰にも言えない不安を抱えていたり。
そうした声は、とても繊細で、静かで、でも切実です。
ここでは、これまでに私が受けたご相談の中から、特に印象に残っている体験談を7つご紹介します。
年齢も状況もさまざまですが、「私も少し似ているかも」と感じるものがあるかもしれません。
共感しながら、あなた自身の気持ちを見つめるヒントにしていただけたら嬉しいです。
体験談1|涙が止まらず、家事ができなくなった(49歳・主婦)
最初はただの疲れかなと思っていたんです。でもある日、洗濯物を畳んでいたときに、突然涙があふれて止まらなくなって…。
理由もないのに泣いてしまって、自分でも「どうしたんだろう?」と不安でたまりませんでした。家族に見られるのも恥ずかしくて、必死にごまかしていたけれど、夕飯の支度中にも泣き出してしまって、もう隠せなくなってしまいました。
「なんでこんなに涙が出るの?」って、自分でもわからなくて。家事も手につかず、ぼーっと座っている時間が増えていくうちに、「もしかして、これが更年期うつなのかな…」と思い始めました。

涙が止まらないとき、それは心が「もうがんばれないよ」と伝えているサインです。理由がわからなくても、大丈夫。そのままのあなたに、まずはそっと寄り添ってあげてくださいね。
体験談2|コントロールできない怒りと孤立感(52歳・パート勤務)
最近、自分の感情がうまく抑えられなくなってきたんです。家族の何気ないひと言にイラッとして、きつく言い返してしまったり、些細なことで声を荒げたり…。そんな自分がイヤで、あとから落ち込むんですけど、また同じことを繰り返してしまって。
家族には「また怒ってる」と距離を取られ始めて、それがさらに孤独感につながってしまいました。もともとは明るい性格だったのに、最近は笑うことも減って、何かに追い詰められているような毎日です。
周りに理解してもらえないのもつらくて、「こんな自分じゃなかったのに」と思うことが増えました。

更年期うつでは、怒りや不安といった感情のコントロールが難しくなることがあります。自分を責めすぎず、「つらかったね」と気持ちに名前をつけてあげてください。
体験談3|夫に理解されず苦しくなった(50歳・共働き)
体が重くて、朝起きるのがつらい日が続いていました。仕事にも行っているし、家事もできる範囲でこなしているのに、どこかずっと空っぽな感じがして。
そんな状態を夫に話したら、「気の持ちようじゃない?」って軽く流されてしまったんです。
「私はちゃんと説明できてないのかな」と思って、何度か気持ちを伝えてみたんですけど、「更年期なら誰でもあるでしょ」とか「俺にどうしろっていうの?」と返されて…。
悲しかったし、正直、それ以来、心の中で夫に期待するのをやめてしまいました。隣にいるのに、ひとりぼっちのような感覚がいちばんつらかったです。

理解されない孤独は、想像以上に心を傷つけます。言葉にならない思いも、誰かにそっと聞いてもらうだけで、少しずつ整理されていきますよ。
体験談4|仕事中に突然涙があふれた(47歳・事務職)
いつも通りに出社して、パソコンに向かっていたときでした。急に涙があふれてきて、自分でもびっくりして。何かがあったわけでもないのに、止めようとしても止まらなくて、その日は早退しました。
帰り道、情けなくて、恥ずかしくて、「どうしてこんなに弱くなっちゃったんだろう」と思いました。もともと責任感が強くて、どんなときも仕事を休まないのが自分の誇りだったんです。それができなくなったことが、とても怖かった。
体力も気力も思うようにいかなくて、心も体もバラバラになっていくような感覚でした。

理由のない涙は、がんばり続けてきた心からのSOSかもしれません。涙が出るのは弱いからではなく、ちゃんと感じられている証です。やさしく休んでいいんですよ。
体験談5|「私はもう必要ない」と感じた瞬間(55歳・子育て後)
子どもたちが巣立って、夫も忙しくしていて、家にいても誰とも話さない日が増えました。それまでは家族の世話や仕事に追われていたのに、急に時間ができて、何をしたらいいのかわからなくなってしまって…。
朝起きても、誰にも必要とされていないような気がして、「今日、私がいなくても困る人はいないな」って思ってしまったんです。
自分の存在に意味を見出せなくなった瞬間は、本当に苦しかったです。周りからは「のんびりできていいね」なんて言われるけれど、心の中はぽっかり穴があいたようでした。何も悪いことが起きていないのに、涙が出る毎日でした。

役割が変わると、心の居場所が見えなくなることがあります。でも、あなたの価値は「誰かのため」だけじゃありません。あなたがいること自体に、意味があります。
体験談6|布団から出られず、自分がわからなくなった(51歳・会社員)
目覚ましが鳴っても、体が動かない日が続いていました。起きなきゃ、会社に行かなきゃって頭ではわかっているのに、体がまったく言うことを聞かないんです。ただ横になって、天井を見つめながら「私、何してるんだろう…」って、ぼんやり考えることしかできなくて。
昔はバリバリ働いて、家のこともちゃんとやって、周りからも「頼りになる人」って言われていたのに。今の私は、何もできないし、やる気も出ない。そんな自分が情けなくて、自分のことがわからなくなっていきました。

動けない日があるのは、がんばってきた証拠です。体が「ちょっと立ち止まって」と教えてくれているのかもしれません。焦らず、ゆっくりでいいんです。
体験談7|「更年期なんて気のせい」と言われて傷ついた(46歳・再就職中)
体がだるくて、気分も落ち込む日が増えてきたころ、夫に「更年期かも」と話したんです。そしたら、「気のせいだよ、気持ちの問題じゃない?」って、笑うように言われて。その一言がすごくショックで、胸がぎゅっと締めつけられるような気持ちになりました。
つらさをわかってもらえないどころか、「気にしすぎ」みたいに扱われたことで、ますます自分の感じていることが信じられなくなってしまって…。再就職の準備もしていた時期だったので、「こんな状態で働けるのかな」と不安ばかりが大きくなりました。ほんの一言で、こんなにも傷つくんだと、自分でも驚いたくらいです。

気のせいなんかじゃありません。感じているつらさには、ちゃんと理由があります。わかってもらえなかったその悔しさも、あなたの大切な気持ちです。
更年期うつの背景にあるもの
「ホルモンのせいだから仕方ない」と言われることもあるけれど、私がこれまでお話を伺ってきた中で感じるのは、更年期うつにはホルモン以外にも、たくさんの“積み重なったもの”があるということです。
それは、がんばってきた証でもあり、誰かのために生きてきたからこそ起こる“心の揺れ”。
ここでは、更年期うつの背景にある見えにくい原因を3つご紹介します。
ホルモン変化だけではない、心の重なり
更年期に入ると、エストロゲンの減少によって心と体にさまざまな変化が起こることは、よく知られています。けれど実際には、ホルモン変化だけでは説明しきれない「心の揺れ」があります。
たとえば、子育てが一段落してぽっかりと時間が空いたとき。これまで頑張ってきた分、「私はこれから何をしたらいいんだろう」と迷いが生まれる方も少なくありません。その戸惑いや空白感が、ゆっくりと心を疲れさせていくのです。
体の変化に加えて、環境の変化や人生の節目も重なり合う――それが更年期うつの背景にあるもののひとつです。
「がんばり屋さん」がなりやすい理由
更年期うつのご相談を受けていて強く感じるのは、「まじめでがんばり屋さんほど、誰にも言えずに抱え込んでしまう」ということです。
家族のために、職場のために、周りを優先して頑張ってきた人ほど、自分のつらさに気づくのが遅くなってしまいます。「私よりもっと大変な人がいるから」「これくらいで弱音を吐いちゃだめ」と、本当は限界が近づいているのに、さらに自分を奮い立たせてしまうんです。
でも、がんばる人ほど、休むことにも罪悪感を抱きやすいんですよね。だからこそ、更年期の変化によって少し立ち止まったとき、これまでの反動が一気に心にあらわれてしまうのかもしれません。
夫婦関係・仕事・親の介護…重なりすぎる負担
更年期の時期というのは、心や体の変化だけでなく、人生のさまざまな役割が重なるタイミングでもあります。
- 子どもの進学や独立
- 夫との関係の変化
- 職場での責任
- 親の介護
どれか一つでも大きな負担なのに、それらが同時にのしかかることで、心が疲れてしまうのも当然です。
とくに女性は「自分がやらなきゃ」と感じやすく、周囲に頼ることが苦手な方も多いです。そのまま無理を続けてしまうと、心のキャパシティが限界を迎え、知らないうちにうつ状態に近づいてしまうことがあります。
環境のせいでも、あなたのせいでもありません。ただ、たくさんのことを背負いすぎているだけ。そのことに、少しでも気づいてあげることが大切です。
更年期うつと向き合うためのやさしいヒント
- 「ちゃんとしなきゃ」
- 「早く元に戻らなきゃ」
そう思えば思うほど、自分を追い込んでしまうことがあります。
でも更年期うつと向き合ううえで大切なのは、“がんばる”ことではなく、“ゆるめる”こと。
ここでは、心が少しでも軽くなるようなヒントを、私の経験から3つご紹介します。どれかひとつでも、あなたの心にやさしく届きますように。
「気のせい」ではなく、ちゃんとつらかった
- 「更年期でしょ?」
- 「気のせいだよ」
そんなふうに言われて、自分でも「こんなことでつらいなんて…」と感じてしまった方は少なくありません。
でも、つらいものは、ちゃんとつらい。他人と比べて感じ方を否定する必要はありません。
あなたの中にある不調は、体にも心にもちゃんと理由があって起こっていること。
- 「私は弱くなったわけじゃない」
- 「がんばってきたからこそ今、疲れてるんだ」
まずはそのつらさを認めてあげてください。
まずは誰かに話してみることから
つらい気持ちを話すのは、勇気がいりますよね。
- 「こんなこと話してもいいのかな」
- 「迷惑かけたくないな」
心の中で何度も引き返してしまう。でも、声に出すことで、ぐるぐるしていた気持ちが少しずつ整っていくことがあります。
誰かに話すことは、弱さではなく、心を守るための大切な行動です。
- 信頼できる人
- 共感してくれる人
- 専門家
どんな相手でも構いません。言葉にした瞬間、「あ、自分はこんなことを抱えてたんだな」と初めて気づけることもあるんです。
「もうひとりで抱えなくていい」と気づけたら
ずっとひとりでがんばってきたあなたへ。
「誰にも頼れない」「ちゃんとしなきゃ」と思いながら、どれだけのものを抱えてきたのでしょうか。
でも本当は――全部ひとりで背負い続ける必要なんてないんです。
弱音を吐くこと、頼ること、自分の心を大切にすることは、甘えじゃありません。誰かに頼ったとき、思いがけず「わかるよ」と返ってくることもある。その瞬間、「あ、もうひとりで抱えなくていいんだ」と気づけると、心は少しずつほぐれていきます。
あなたの荷物を、少しずつ誰かと分け合ってもいいんですよ。
まとめ|更年期うつを経験したあなたへ伝えたいこと
更年期うつは、心と体がそっと「もう少しだけ立ち止まって」と教えてくれているサインなのかもしれません。
- 泣いてしまう日
- 動けない朝
- 誰にもわかってもらえない夜
そんな日があっても、あなたはおかしくなんかありません。
今回ご紹介した体験談に、もし少しでも共感できるところがあったら、それはあなたの心が「わたしもつらかった」と感じている証です。自分の気持ちにそっと目を向けてあげること、それが回復の第一歩です。
つらいとき、無理をしなくて大丈夫。ひとりじゃないよ、というメッセージが、この記事を通してあなたに届いていたら嬉しいです。
つらさに気づけたあなたへ
ここまで読んでくださって、本当にありがとうございます。
「更年期うつかもしれない」と気づくことは、簡単なことではありません。でも、あなたがその気持ちに目を向けたこと自体が、もう大きな一歩です。
私のもとには、同じように「誰にも言えなくて…」と勇気を出して相談してくださる方がたくさんいます。もし今、話せる人がいなかったとしても大丈夫。言葉にならなくても大丈夫。あなたの気持ちが、やさしく受け止められる場所がここにあります。