「カウンセリング トラウマ」と検索窓に打ち込んだあなたは、今、どんな夜を過ごされているでしょうか。
ふだんは仕事も家事もちゃんとこなしているのに、ある場面になると急に身体がこわばる。夫の声色、実家への帰省、ある季節、ある匂い、ニュースの一場面。「なんでこんなに反応してしまうんだろう」「もうずいぶん昔のことなのに」「私はいつまで、これを引きずっているんだろう」。そんな気持ちを抱えたまま、画面を開いてくださったかもしれません。
まずお伝えしたいのは、過去の傷が今もうずくのは、あなたが弱いから、引きずっているから起きているのではないということなんです。心と身体は、一度受けた強い衝撃を、何年経っても丁寧に覚えています。それは欠陥ではなく、あなたを守るために備わった機能の一部なんですよ。
この記事は、PTSDや複雑性トラウマといった医学的な用語を解説するための場所ではありません。年間多くの方のお話を聴かせていただいているカウンセラーの立場から、過去の傷が今の生活にどう出るのか、それをカウンセリングでどんなふうに「安全に」扱っていくのかを、煽らず、急がせず、ゆっくり整理していく場所です。
「一気に解決します」「すぐに楽になります」というような派手な約束は、しません。読み終わったとき、肩の力が少しだけ抜けて、「無理に思い出さなくていいんだ」と思っていただけたら、うれしく思います。
目次

年間500件以上のお悩みに寄り添うカウンセラー。解決を押しつけるのではなく、ご相談者様にとって「心を整える場所」となることを目指したサポートを行っている。SNS総フォロワー数は4万人を超え、著書『40歳からの幸せの法則』の執筆や、FM845のラジオパーソナリティ、大学やカルチャーセンターでの講師など幅広く活動中。
「これってトラウマなのかな」と感じたあなたへ、最初に伝えたいこと
カウンセリングのお部屋で、「これってトラウマって言っていいんでしょうか」と小さな声でおっしゃる方は、本当に多いんです。
そうおっしゃる方は、たいてい、自分の傷を「他の人に比べたら大したことない」「もっとひどい目に遭った人がいる」と、無意識のうちに値踏みしてしまっていらっしゃいます。だからこそ、最初にお伝えしておきたいことがあります。
過去の傷を「これくらい」と値踏みしないでください
トラウマかどうかは、出来事の「大きさ」で決まるものではないんです。同じ出来事でも、受けた年齢、そのときの安全感、そばにいてくれた人がいたかどうか、その後の回復の時間があったかどうかで、心への残り方はまったく違ってきます。
たとえば、子どもの頃に何度も繰り返された強い言葉。配偶者から長く受け続けた否定。事故や災害で体験した一瞬の出来事。大切な人を失ったあとの長い喪失感。医療や出産での強い恐怖体験。どれも、「他の人と比べて軽い・重い」で測るものではありません。
あなたの心と身体が、今でもその出来事の前で身を固くするなら、それはあなたにとって十分に大きな出来事だったということ。「これくらいで」と自分を黙らせてきた時間そのものが、もう、十分つらかったんですよ。
まずは、自分の中で起きてきたことを、値踏みするのをやめてみてくださいね。
「トラウマ」という言葉を使うかどうかは、あとからで大丈夫
「トラウマ」という言葉は、医療や心理学の中では一定の定義があります。でも、検索してたどり着いた今のあなたが、自分の傷をその言葉で呼ぶかどうかは、急いで決めなくて大丈夫です。
カウンセリングでも、初対面のときに「これは私のトラウマです」と整理して話してくださる方は、ほとんどいらっしゃいません。「うまく言えないんですけど、なんとなく、ある場面になると苦しくなって」「昔のことが、急に頭をよぎる日があって」。そんな曖昧なところから、ゆっくり始まっていきます。
言葉が先に来なくていいんです。今の自分に起きている感覚があり、それをそのまま話せる場所があれば、必要な言葉は、あとから自然に追いついてきます。
トラウマが日常に出ている、3つの兆し
過去の傷は、はっきりとした形で出てくれるとは限りません。むしろ多くの場合、別の顔をして、毎日の生活のすき間にそっと現れます。
ここでは、カウンセリングの現場でよくお聴きする「日常に出ている3つの兆し」を整理してみます。チェックリストではなく、「あ、自分にもこんな感じがあるかもしれない」と眺めていただくつもりで読んでみてくださいね。
兆し1|身体に出るサイン|こわばり・動悸・眠りの浅さ
過去の傷は、多くの場合、まず身体に出ます。頭で「もう昔のこと」と思っていても、身体は別のスピードで覚えているからです。
ある場面で急に肩や首がこわばる。動悸がして呼吸が浅くなる。夜、布団に入った瞬間に目が冴えて、過去の場面が映像のように浮かんでくる。逆に、何も感じないように身体がスーッと遠くなる感覚もあります。
これらは、あなたが大げさに反応しているのではありません。心と身体が、過去の似た場面を思い出して、危険を察知するモードに入っているんです。本来は、あなたを守るための反応なんですよ。
ただ、このモードが長く続くと、身体が休まりません。眠りが浅くなり、頭痛や胃の不調が慢性化してくる。そうなると、生活そのものを立て直すのが難しくなっていきます。身体に出ているサインは、あなたが感じている以上に大事なお知らせなんです。
兆し2|関係に出るサイン|近づくと怖い、離れると寂しい
過去の傷は、人との関係性にも出てきます。「近づきすぎると怖い、けれど離れすぎると寂しい」という、行ったり来たりの感覚です。
人と仲良くなりかけると、急に冷たくしてしまう。相手が少し優しくしてくれただけで、強い罪悪感や違和感が湧く。逆に、明らかに自分を雑に扱う相手と離れられない。「またこのパターンだ」と、自分でも分かっているのに繰り返してしまう。
こうした感覚は、過去に「安心して人と一緒にいる」という体験が十分に積めなかった方に、よく見られるものです。あなたが冷たいわけでも、依存的なわけでもありません。心が、安心の感覚そのものを、これから少しずつ覚え直していく途中なんです。
兆し3|自己評価に出るサイン|「私なんて」が口ぐせになっている
そして、もっとも見えにくく、もっとも長く尾を引くのが、自己評価への影響です。
「私なんて」「どうせ私は」「私さえ我慢すれば」。気づくと、これらの言葉が口ぐせになっていませんか。何かを成し遂げても素直に喜べない。褒められると居心地が悪くなる。自分が幸せになることに、どこか申し訳なさがつきまとう。
これは、性格の問題ではないことが多いんです。長く強い言葉を浴び続けたり、そばにいる人から大事に扱われない時間が続いたりすると、心の中で「自分はそういう存在だ」という前提ができあがってしまいます。
その前提は、誰かに一度言われたら消えるようなものではありません。だからこそ、カウンセリングのような「丁寧に時間をかけて扱える場所」が必要になってくるんですよ。
カウンセリングでトラウマを安全に扱う、3つの段階
「カウンセリングでトラウマを扱う」と聞くと、ドラマや映画の影響で、「過去をぜんぶ思い出して、わんわん泣いて、すっきりして終わり」というイメージをお持ちの方がいらっしゃいます。
でも、実際の現場では、まったく違います。トラウマを扱うときは、何よりも「安全に」が最優先。そのために、ゆるやかな段階を踏んでいきます。ここでは、たま先生としてお伝えしている3つの段階をご紹介しますね。
段階1|安定化|まず「今の生活」を整える
最初の段階は、過去ではなく「今」に焦点を当てます。
眠れているか。ご飯がちゃんと食べられているか。涙が止まらない時期に、誰かと話せているか。動悸や強い不安が出たとき、自分を落ち着かせる方法をいくつ持っているか。日中、ふっと息ができる時間があるか。
こうした「今の生活の土台」が揺らいでいる状態で、いきなり過去の話を深掘りすることは、絶対にしません。土台が弱いまま昔の傷を開くと、かえって不調が強まってしまうからです。
土台を整える時間そのものが、もうカウンセリングの大事な仕事なんです。安心して呼吸できる場所を、一つずつ作っていく。それが、過去を扱うための準備として、ものすごく大きな意味を持つんですよ。
段階2|物語化|話せる範囲で、少しずつ言葉にしていく
土台がある程度整ってきたら、過去のことを「話せる範囲で」言葉にしていく段階に入ります。
ここでも、無理は絶対にしません。話すかどうか、どこまで話すか、いつ止めるかは、すべてあなたが決めます。カウンセラーは、深く掘り下げるための質問をぐいぐいぶつけてくることはありません。
「話していて苦しくなったら、いったん止めてくださいね」「今日は触れないで、別の話にしましょうか」。そういった声かけを挟みながら、ご自分のペースで、少しずつ言葉にしていく時間です。
この「物語化」の段階で起きるのは、ばらばらだった記憶や感覚に、ゆるやかに順番がついてくることです。「あのとき自分は、本当はこう感じていた」「ずっと言えなかった怒りがあった」。そうした気づきが、責めるためではなく、ねぎらうために、出てくるようになっていきます。
段階3|統合|「過去の私」を今の自分に迎え入れる
最後の段階は、「統合」と呼ばれるところです。
これは、過去の出来事をなかったことにする作業ではありません。「あったこと」として認めながら、それを抱えていた当時の自分を、今の自分が連れて帰ってきてあげる作業です。
「あんなに小さかった自分が、よく耐えてきたね」「あの時期の私を、もう一人で立たせておかなくていい」。そんなふうに、過去の自分と今の自分のあいだに、新しい関係が結ばれていく。すると、同じ場面に出会っても、身体や気分の反応が、少しずつ穏やかになっていきます。
「過去がなくなる」のではなく、「過去との距離が、自分にとって扱いやすい距離に変わっていく」。これが、カウンセリングでトラウマを扱った先に、ゆっくりと訪れる変化なんです。
無理に思い出さなくていい、3つの理由
ここまで読まれて、「とはいえ、やっぱり昔のことを全部話さないといけないんでしょう?」と感じていらっしゃる方もいるかもしれません。
カウンセラーとしてはっきりお伝えしておきたいのは、無理に思い出さなくていいということなんです。理由は、大きく3つあります。
理由1|思い出すこと自体が、心と身体に強い負荷をかける
過去の出来事を細かく思い出す作業は、それ自体が心と身体に大きな負荷をかけます。
頭で順番に振り返るだけのつもりでも、身体は当時の場面を再体験するように反応します。動悸、息苦しさ、涙、無感覚、眠れなさ。これらが、思い出す作業のあいだも、終わったあとも、しばらく続くことがあるんです。
土台が整っていない時期にこの負荷をかけると、生活そのものが回らなくなることがあります。だからこそ、専門家がそばにいない場所で、一人で過去を掘り起こす時間を作るのは、おすすめしません。
「思い出さない」という選び方は、逃げではないんですよ。今のあなたを守る、立派な選択なんです。
理由2|記憶は「正確に再生する」より「安全に扱う」が先
過去の記憶は、ビデオのように正確に再生されるものではありません。年月の中でかたちを変え、別の場面と混ざり、強い感情と結びついて残っていきます。
カウンセリングでも、目指すのは「正確に思い出すこと」ではなく、「安全に扱える距離まで、整理し直すこと」です。
すべてを言葉にしなくても、心と身体の反応はやわらいでいきます。覚えているところは覚えているまま、覚えていないところは覚えていないまま、それでも生きていける感覚を取り戻していく。これが、カウンセリングが目指している方向なんです。
理由3|思い出さなくても、今の生きづらさはほどけていきます
そして、ここが大事なところなのですが、過去の出来事を全部思い出さなくても、今の生きづらさは、十分にほどけていきます。
なぜなら、今のあなたの苦しさを作っているのは、「過去の出来事」そのものというよりも、「過去の出来事のあいだに身につけてしまった、生きるためのクセ」だからです。人を信じられなくなったクセ。自分を後回しにするクセ。怒りを飲み込むクセ。
カウンセリングでは、過去の出来事をすべて開かなくても、こうしたクセに「今のあなた」と一緒に気づいて、少しずつほどいていくことができます。「どうしてこのクセがついたんだろう」を、必要な範囲だけ振り返れば、十分なんですよ。
カウンセリング・精神科・心療内科、それぞれの役割
トラウマと向き合うときに、もう一つ大切にしてほしいのが、「どこに相談するか」の見立てです。
カウンセリングだけが正解ではありません。状態によっては、医療機関に先に行っていただきたいこともあります。ここでは、役割の違いをやさしく整理しておきますね。
精神科・心療内科に先に行ってほしいサイン
次のような状態が、はっきりと出ているときは、まずは精神科・心療内科を受診していただきたいんです。
過去の場面が、突然、目の前に映像のように蘇って息ができなくなる。気がつくと、自分の身体が遠くにあるような感覚になり、時間や場所の感覚が抜け落ちる。眠れない日が2週間以上続いている。食欲が極端に落ちている、または止められない。「死にたい」「消えてしまいたい」という気持ちが、頭から離れない。
こうした症状が出ているとき、心と身体はすでに、かなりの負荷の中にあります。カウンセリングだけでは、土台を立て直すのに時間がかかってしまいます。お薬の力や、医師としての見立てを借りることが、回復への近道になることが多いんです。
医療にかかることは、敗北でも甘えでもありません。今のあなたの命と生活を守るための、もっとも実用的な選択です。
カウンセリングが力を発揮するタイミング
一方、生活はなんとか回っているけれど、過去の傷が人間関係や自己評価にじわじわ影響している。眠れない日もあるけれど、命にかかわるところまでではない。お薬で症状が落ち着いて、少し余裕が出てきた。
こうしたタイミングでは、カウンセリングの力が発揮されやすくなります。じっくりと時間をかけて、過去と今のつながりを整理し、自分を扱うクセを少しずつ作り直していく。医療がカバーしきれない「対話の時間」を、カウンセラーが受け持ちます。
ですから、「カウンセリング トラウマ」と検索したからといって、すぐにカウンセリングを始めなくてはいけないわけではないんです。今の自分の状態を見立てたうえで、必要なら医療を先に。落ち着いてから対話を、という順番でも、まったく問題ありません。
並行して使う、という選択肢もあります
そして、医療とカウンセリングを「どちらか一つ」と決めなくてもいいんです。
精神科や心療内科で診ていただきながら、別の場所でカウンセリングを受ける。そんな組み合わせは、ごく一般的です。お薬で身体の症状を整えながら、対話の時間で心を整える。両輪で進むほうが、回復の歩幅が安定することも多いんですよ。
主治医の先生に「カウンセリングも併用したいんですが」と一言お伝えしておくと、安心して両方を活用していただけます。
一人で抱えてきた重さを、安全な場所でおろす
ここまで読み進めてくださって、ありがとうございます。
過去の傷を、長く一人で抱えてこられたあなたが、最後の章で読みたいのは、おそらく「次の一歩」のことではないでしょうか。
「話す」と「思い出す」は、同じではありません
最後にお伝えしておきたいのは、カウンセリングで「話す」ということと、「過去をぜんぶ思い出す」ということは、まったく別物だということです。
話すというのは、今の自分の中で動いている感覚を、安全な場所で言葉にしてみる行為です。「最近、こういう場面で苦しくなる」「何が原因かはよく分からないけれど、ずっと胸が重い」。そういった、ぼんやりした手触りのまま、口に出してみることから始まります。
過去のことに触れるかどうかは、そのあとです。話していくうちに、自然と過去とつながる場面が出てくることもあるし、まったく出てこないまま、今の生きづらさだけが少しずつほどけていくこともあります。
「全部話さないと、行く意味がない」ということは、ありません。ぼんやりしたまま行ってみる、で十分なんですよ。
カウンセラーに話すという選択肢
家族にも、夫にも、友人にも、ここまでの話はしてこなかった。そういう方は本当に多いです。「言ったら関係が変わってしまう」「重たがられたくない」「言葉にした瞬間、自分が壊れそう」。どれも、ごく自然な気持ちなんです。
だからこそ、利害関係のないカウンセラーに話すという選択肢を、心の片隅に置いておいてくださいね。
カウンセリングのお部屋では、あなたを評価したり、ジャッジしたりする人はいません。「もっと早く来ればよかったのに」とも言いませんし、「あなたが頑張ればいいのに」とも言いません。今日のあなたが、今日のままで、座っていていい場所です。
たまお悩み相談室にも、過去の傷を長く抱えてきた方々が、たくさんお話しに来てくださいます。「誰にも言えなかったことを、ここで初めて口にできた」「思い出さなくていいと言われて、ようやく息ができた」。そんな声を、何度も聴かせていただいてきました。
すぐに予約をしなくても大丈夫です。「いつかは話してみてもいいかもしれない」。そう思えただけでも、今日のこの時間は、十分意味のある時間だったんですよ。
まとめ|過去の傷は、ゆっくり、安全に、扱える場所があります
長い記事を読んでくださって、ありがとうございました。
最後にお伝えしたかったことを、そっとまとめておきますね。
- 過去の傷を「これくらい」と値踏みしないでほしいこと
- トラウマが日常に出る兆しは、身体・関係・自己評価の3つに現れること
- カウンセリングでは、安定化・物語化・統合の順で、安全に扱っていくこと
- 無理に思い出さなくても、今の生きづらさはほどけていくこと
- 強い症状が出ているときは、まず精神科・心療内科を頼ってほしいこと
- 「話す」と「思い出す」は別物。ぼんやりしたまま話していい場所があること
過去の傷は、一気に消えてくれるものではありません。でも、ゆっくり、安全に、扱える場所はちゃんと用意されています。あなた一人で抱え続けなくていいんですよ。
今夜、もうこれ以上ひとりで考え込まなくて大丈夫。眠れる範囲で眠って、食べられるものを食べて、明日また少しだけ、自分のことを考えてあげてくださいね。
そして、もしどこかで「話してみてもいいかもしれない」と思えたら、医療機関でも、公的な相談窓口でも、私たちカウンセラーでもかまいません。あなたの声を聴かせていただける場所は、必ずあります。
※本記事は、カウンセラーの臨床経験に基づく一般的な情報提供であり、医学的な診断・治療を代替するものではありません。フラッシュバック・解離・強い不眠・希死念慮など、心身の症状が強く出ている場合は、まず精神科・心療内科などの医療機関にご相談ください。緊急時・つらいときには、よりそいホットライン(0120-279-338/24時間・通話料無料)、いのちの電話(0570-783-556)、お住まいの地域の精神保健福祉センターなど、公的な相談窓口もご利用いただけます。
