「あなたは産むだけでいい」――祝福のない未来
手元のエコー写真を見つめながら、音のない深い溜息をついた。私のお腹の中には、確かに小さな命が宿っている。
つい数週間前まで、私は幸せなプレ花嫁のはずだった。3年付き合った彼と婚約し、これからの未来に胸を膨らませていた。
しかし、義母の「あなたは産むだけでいい。バリバリ働いて、子供の面倒は私が見るから」という冷たい一言が、すべてを狂わせた。
強い嫌悪感を抱き、「最初は自分たちで育てたい。親戚付き合いも最低限にしたい」と彼に伝えた。
だが、彼から返ってきたのは共感でも歩み寄りでもなかった。
「親に預けるのが普通だろ。親戚に会わせないと、君みたいに協調性のない人間に育つ」
私という人間を根底からえぐるような、激しい人格否定の言葉だった。
激しい喧嘩の末、「別れる」と吐き捨てた彼に、私も半ば呆れ果てて了承した。それなのに、すべてが終わった矢先の妊娠発覚だった。
音信不通の彼と、責め立てる両親の狭間で
妊娠を伝えると、最初は「産んでほしい」と言っていた彼。しかし、私の両親が彼に対して「こんな状態では、到底娘は嫁にやれない」と苦言を呈した途端、彼は態度を急変させた。
「そんなこと言われるなら俺は加害者だ! もう子供もお前もいらない、関係ない!」
逆ギレした挙げ句、完全に音信不通になった。LINEを送っても既読すらつかない真っ暗なスマホの画面を見つめながら、彼への未練なんてとうに消え失せていることに気づく。彼と結婚したって、私がひたすら我慢し続けるだけの、息の詰まる地獄のような生活が待っているだけだ。
でも、この小さな命はどうすればいい?
「彼とはきっぱり別れて、子供も諦めなさい」 両親の現実的な言葉が、鉛のように重くのしかかる。
私にも悪いところがあったんじゃないか。もっと上手く立ち回れていたら、こんな最悪の事態にはならなかったんじゃないか。
自分を責めれば責めるほど、涙が止まらなくなる。産みたい気持ちはある。
でも、たった一人でこの子を幸せにできる自信なんて、どこを探しても見つからなかった。
幸せに「できる」からじゃない、幸せに「する」と決めること
暗い部屋の中、スマホのバックライトだけがぼんやりと私の顔を照らしている。このままじゃダメだ。他人の言葉や状況に振り回されるのではなく、自分の本当の心と向き合わなきゃいけない。
ふと、心の奥底で静かな声がした。 一生一緒にいることすら想像できないあの男と、無理に家族になる必要なんてない。
そして、自信がないから産むのをやめる、というのもなんだか違う気がした。どんなことだって、最初から完璧な自信を持っている人なんていないのだから。
幸せにできる自信があるから産むんじゃない。「産んで、この子も自分も絶対に幸せでいる」と、私自身が決めるかどうかだ。
どちらを選んだとしても、最初から用意された正解なんてない。私が選んだ道を、私自身の手で正解にしていくしかないのだ。
カーテンの隙間から、窓の外が少しずつ白み始めているのが見えた。まだ、すぐには決断できないかもしれない。
でも、誰のせいでもない私自身の人生を取り戻すために。今日、ほんの少しだけ勇気を出して、誰かにこのごちゃごちゃになった心の内を聞いてもらおう。
朝焼けの光の中、私は静かにそう決意した。








