「仕事から帰ってソファに座ったら最後、もう一歩も動けない」
「お風呂に入らなきゃいけないのに、身体が鉛のように重い…」
毎晩、そんな自分を「だらしない」「汚い」と責めていませんか?
でも、安心してください。それはあなたの性格がズボラになったからではありません。
その「お風呂に入れない」という感覚は、身体が発している「これ以上動かないで!」という緊急停止のサイン、つまり更年期特有のゆらぎである可能性が高いのです。
なぜ入浴がこんなに辛いのか。
まずはご自身の今の状態を、1分でできるセルフチェックで客観的に見てみませんか?
その「辛さ」の正体を知るだけで、心の重荷がスッと軽くなるはずです。
たま先生(中森 万美子)
「中森万美子鍼灸院」院長、「たま お悩み相談室」代表カウンセラー。 東洋医学で体を整え、カウンセリングで心に寄り添う「心身一如」のケアが信条。 FM845パーソナリティ。SNSフォロワー4万人超。著書『40歳からの幸せの法則』。
- 1. なぜ?「お風呂に入りたくない」が更年期のサインと言われる理由
- 1.1. 性格のせいじゃない!自律神経の「強制シャットダウン」
- 1.2. 東洋医学で見る「気虚(ききょ)」というガス欠状態
- 1.3. 30代〜50代に多い「隠れ更年期」のリスク
- 2. お風呂に入りたくない夜の「自分を許す」3つの対策
- 2.1. 今夜は入らなくてOK!「命に関わらない」と割り切る
- 2.2. 拭くだけ、着替えるだけ。ハードルを「足首」まで下げる
- 2.3. 家族に宣言する「今日はバッテリー切れです」
- 3. その辛さ、実は「お風呂」だけじゃありませんか?
- 3.1. イライラ、めまい、不眠…セットで現れる不調
- 3.2. 「私は大丈夫」と思っている人ほど深い「我慢」の闇
- 4. 自分の「数値」を知ることが、一番の心のケアになる
- 4.1. 漠然とした不安の正体は「原因がわからない」こと
- 4.2. たった1分。まずは今の「バッテリー残量」を確認してみましょう
なぜ?「お風呂に入りたくない」が更年期のサインと言われる理由

「昔は大好きだったお風呂が、今は億劫で仕方がない」
「メイクを落とす気力すら湧かない」
実はこれ、更年期世代(プレ更年期を含む)の女性から、当院のカウンセリングで非常によく聞くお悩みの一つなんです。
決してあなたが怠け者になったわけではありません。これには、医学的・東洋医学的にはっきりとした理由があります。
性格のせいじゃない!自律神経の「強制シャットダウン」
私たちの身体は、アクセルの役割をする「交感神経」と、ブレーキの役割をする「副交感神経」がバランスを取り合っています。
更年期やプレ更年期の時期は、女性ホルモン(エストロゲン)が減少することで、この自律神経の調整がうまくいかなくなります。
その結果、日中は仕事や家事で気を張って「交感神経(アクセル)」をベタ踏みし続けている状態に。
そして夜、帰宅してホッとした瞬間に、張り詰めていた糸がプツンと切れてしまいます。
本来ならここでお風呂に入ってリラックスしたいところですが、脳は「これ以上エネルギーを使う行為は危険!強制終了!」と判断し、身体を動けなくさせてしまうのです。
つまり、「お風呂に入りたくない」のではなく、「生命維持のために、動くことを脳が拒否している」という防衛反応なんですね。
東洋医学で見る「気虚(ききょ)」というガス欠状態
東洋医学の視点でも見てみましょう。
この状態は、生きるためのエネルギーである「気(き)」が極端に不足している「気虚(ききょ)」と考えられます。
車に例えるなら、ガソリンが空っぽの状態です。
ガソリンが入っていない車に向かって「走れ!なんで走れないんだ!」と怒る人はいませんよね?今のあなたは、まさにその状態です。
実は、入浴という行為は意外と体力を消耗します。
- 服を脱ぐ
- 髪を洗う
- 身体を洗う
- 湯船の水圧に耐える
- 髪を乾かす
- スキンケアをする
これらは、エネルギー不足の身体にとってはフルマラソンを走るのと同じくらい過酷なミッション。
「お風呂に入りたくない」と思うのは、残りのわずかなエネルギーを温存しようとする、身体の賢い働きなのです。
30代〜50代に多い「隠れ更年期」のリスク
「まだ更年期なんて早い年齢だし…」と思っている方も要注意です。
東洋医学では、成長や発育、生殖を司るエネルギーの貯蔵庫を「腎(じん)」と呼びます。
年齢に関わらず、過度なストレスや過労、睡眠不足が続くと、この「腎」の力が弱まり、更年期と同じような「気力・体力の低下」が起こりやすくなります。
これを私は「隠れ更年期」と呼んでいます。
「生理があるから大丈夫」と無理を重ねていると、ある日突然、スイッチが切れたように動けなくなってしまうことがあるのです。
お風呂に入りたくない夜の「自分を許す」3つの対策

原因がわかったところで、具体的にどうすればいいのでしょうか?
一番大切なのは、「頑張らないこと」です。
お風呂に入れない夜があってもいい。
私がおすすめする自分を許すための3つの対策をご紹介します。
今夜は入らなくてOK!「命に関わらない」と割り切る
まずは、「今日お風呂に入らなくても死なない」と声に出して言ってみてください。
1日や2日お風呂に入らなくても、命に関わることはありません。
むしろ、「入らなきゃ、入らなきゃ」と自分を追い詰め、ストレスを感じながら夜を過ごす方が、自律神経にとっては毒になります。
「今日は充電の日!」と割り切って、そのままベッドに入ってしまいましょう。
罪悪感を持たずにぐっすり眠ることで、翌朝少しだけエネルギーが回復しているはずです。
拭くだけ、着替えるだけ。ハードルを「足首」まで下げる
「どうしても清潔にしないと気が済まない」という方は、完璧を目指すのをやめましょう。
- ホットタオルで首の後ろや脇の下だけ拭く
- 洗顔シートでメイクだけ落とす
- 部屋着からパジャマに着替えるだけ
これだけで十分、100点満点です。
「お風呂場に行く」という高いハードルを、「着替えるだけ」という足首の高さまで下げてあげてください。
できた自分を「えらい!」と褒めてあげることが、心のケアに繋がります。
家族に宣言する「今日はバッテリー切れです」
もしご家族がいるなら、勇気を出して宣言してみましょう。
「ごめん、今日はお母さんバッテリー切れです。お風呂パスして寝ます!」
家族はあなたが思っている以上に、あなたが倒れてしまうことを心配しています。
無理をしてイライラしながらお風呂に入るよりも、「今日は休むね」と笑顔(もしくは疲れた顔そのままで)伝えてくれた方が、家族も安心するものです。
言葉に出すことで、自分自身にかけていた「ちゃんとしたお母さん(妻)でいなきゃ」という呪縛を解いてあげましょう。
その辛さ、実は「お風呂」だけじゃありませんか?

「お風呂に入りたくない」という悩みは、氷山の一角かもしれません。
最近、こんな不調もセットで感じていませんか?
- 些細なことでイライラしてしまう
- 急にカーッと熱くなることがある
- 朝、すっきりと起きられない
- 理由もなく不安になったり、涙が出そうになる
イライラ、めまい、不眠…セットで現れる不調
これらはバラバラの病気ではなく、根っこは同じ「更年期のバランスの乱れ」である可能性が高いです。
「気(エネルギー)」が不足すると、感情のコントロールも効きにくくなります。
「血(けつ)」の巡りが悪くなると、不安感や不眠に繋がります。
すべては、身体が「今は無理をする時期じゃないよ、ケアが必要な時期だよ」と教えてくれているサインなのです。
「私は大丈夫」と思っている人ほど深い「我慢」の闇
特に、責任感が強く、真面目な方ほど要注意です。
「これくらいの疲れはみんな感じているはず」
「自分の能力不足のせいだ」
そうやって我慢を重ね、身体からのSOSを無視し続けてしまうと、回復に長い時間がかかってしまうこともあります。
辛いと感じることに、年齢や立場は関係ありません。
「辛い」と感じたその時が、ケアを始めるべきタイミングなのです。
自分の「数値」を知ることが、一番の心のケアになる

「更年期」という言葉を認めるのは、少し怖いかもしれません。
「老化」と言われているようで、嫌な気持ちになる方もいるでしょう。
ですが、更年期は「老化」ではなく、身体が次のステージへ進むための「変化」の時期です。
漠然とした不安の正体は「原因がわからない」こと
今、あなたが一番辛いのは、「なんでこんなにできないんだろう」と、原因がわからないまま自分を責め続けていることではないでしょうか?
「お化け」が怖いのと同じで、正体がわからないものは不安で怖いものです。
でも、電気がついて「なんだ、ただの柳の木か」とわかれば、恐怖は消えますよね。
不調も同じです。
「ああ、今の私のイライラやだるさは、この数値のせいだったんだ」
と客観的な数値を見ることで、「私の性格のせいじゃなかった」と腑に落ち、自分を責める気持ちがスッと消えていきます。
たった1分。まずは今の「バッテリー残量」を確認してみましょう
病院に行く時間がない方や、まだ受診する勇気が出ない方もいらっしゃると思います。
まずは、誰にも知られずにできるセルフチェックで、ご自身の今の状態を把握してみませんか?
それは、いわば今のあなたの「身体のバッテリー残量確認」です。
残量がわかれば、「今日は早めに寝よう」「明日は少しペースを落とそう」と、自分を守るための対策が立てられます。
お風呂に入りたくない夜は、身体があなたに「自分を大切にして」と伝えている夜です。
その声を無視せず、まずは今の状態をチェックして、ご自身を労るきっかけにしてください。
あなたの辛さは、数値化することで、必ず解決の糸口が見つかります。
