特別な理由はないのに、なぜか落ち着かない。夕方になると漠然とした不安に襲われて、家事や仕事が手につかない……。
「昔はもっとテキパキできていたのに」と、自信を失っていませんか?
でも、安心してください。それはあなたの心が弱いからでも、性格が変わってしまったからでもありません。体が大きな変化の時期を迎え、一時的にバランス調整がうまくいっていないだけなのです。
まずは、その辛さがどこから来ているのか、今の体の「お天気」を客観的に見てみましょう。
たま先生(中森 万美子)
「中森万美子鍼灸院」院長、「たま お悩み相談室」代表カウンセラー。 東洋医学で体を整え、カウンセリングで心に寄り添う「心身一如」のケアが信条。 FM845パーソナリティ。SNSフォロワー4万人超。著書『40歳からの幸せの法則』。
- 1. 「更年期かも?」と不安になるその前に。ソワソワする焦燥感は「心のSOS」
- 1.1. 理由のない不安やイライラ、こんな症状はありませんか?
- 1.2. 「私がダメになったから?」いいえ、それは体を守るための反応です
- 2. 更年期にソワソワする理由【医学編】自律神経の誤作動
- 2.1. 脳の司令塔が大混乱?エストロゲン減少と「脳のパニック」
- 2.2. 幸せホルモン「セロトニン」不足が招く心のブレーキ故障
- 3. 更年期にソワソワする理由【東洋医学編】「気逆」と「肝」の乱れ
- 3.1. 体がまるで沸騰したヤカン?気が頭にのぼる「気逆(きぎゃく)」とは
- 3.2. 感情のコントロールセンター「肝(かん)」がキャパオーバーを起こしている
- 4. ソワソワする夜に試して。高ぶった神経を鎮める「お守りケア」
- 4.1. 意識を「下」に向けるだけ。気を鎮める呼吸のコツ
- 4.2. 頭寒足熱(ずかんそくねつ)で、頭にのぼった熱を足元へ逃がす
- 5. ひとりで抱え込まないで。まずは体の声を「数値」で聞いてみましょう
- 5.1. 「更年期」と認めるのは怖いけれど、正体がわかれば怖くない
- 5.2. 1分でわかる「体の通信簿」。まずはセルフチェックで自分をいたわって
「更年期かも?」と不安になるその前に。ソワソワする焦燥感は「心のSOS」

「なんだか、いつもと違う」
ふとした瞬間に感じるその違和感。見て見ぬふりをしようとしても、体の奥から湧き上がってくる「ソワソワ」は、なかなか無視できませんよね。
理由のない不安やイライラ、こんな症状はありませんか?
あなたは今、こんな自分に戸惑っていませんか?
- じっとしていられない:用もないのにキッチンとリビングを往復したり、スマホを見ても内容が頭に入ってこない。
- 予期不安:具体的なトラブルはないのに、「何か悪いことが起きるんじゃないか」と心臓がドキドキする。
- 夕方からの不調:日中は気が張っているけれど、夕方や夜になると急に寂しさや焦りが押し寄せてくる。
- 音や光に敏感:テレビの音がうるさく感じたり、家族の何気ない一言にカッとなってしまったりする。
もし当てはまるなら、それはあなたが怠けているわけでも、情緒不安定な性格になったわけでもありません。
「私がダメになったから?」いいえ、それは体を守るための反応です
真面目で頑張り屋さんな方ほど、「こんなにイライラするのは、私の修行が足りないからだ」「もっとしっかりしなきゃ」と自分を責めてしまいがちです。
でも、鍼灸師である私から言わせてください。
その不調は、あなたの性格のせいではありません。
今のあなたの体は、今まで通りに動こうとして、必死にアクセルを踏み続けている状態です。けれど、体の中のエネルギーバランスが少し変わってきているため、空回りして「ソワソワ」という熱を生んでしまっているだけなのです。
それは、「もう十分頑張っているから、少しペース配分を変えようよ」という、体からの愛あるSOSなんですよ。
更年期にソワソワする理由【医学編】自律神経の誤作動

では、なぜ「ソワソワ」や「焦り」が起きるのでしょうか?
まずは体の仕組み(医学的な視点)から、その正体を解き明かしていきましょう。敵の正体がわかれば、必要以上に怖がることはありません。
脳の司令塔が大混乱?エストロゲン減少と「脳のパニック」
40代半ばから50代にかけて、女性の体は「更年期」という大きな曲がり角を迎えます。この時期、卵巣から分泌される女性ホルモン「エストロゲン」が急激に減少しはじめます。
脳の視床下部(ししょうかぶ)という司令塔は、「ホルモンを出して!」と指令を出し続けるのですが、卵巣はそれに応えることができません。
すると、司令塔である脳は「どうして指令通りに動かないんだ!」とパニック状態(混乱)に陥ります。
視床下部は、ホルモンだけでなく「自律神経」のコントロールセンターでもあります。
脳のパニックが飛び火して、自律神経まで誤作動を起こし、勝手に心臓をドキドキさせたり、冷や汗を出したり、ソワソワとした焦燥感を引き起こしたりするのです。
つまり、今のあなたは「脳の司令塔が一時的にバグを起こしている」だけ。あなたの意思とは無関係に起きている生理現象なのです。
幸せホルモン「セロトニン」不足が招く心のブレーキ故障
さらに、エストロゲンには「セロトニン」という脳内物質の分泌を助ける働きがあります。
セロトニンは別名「幸せホルモン」とも呼ばれ、不安やイライラを抑えて心を穏やかに保つブレーキの役割を持っています。
更年期に入りエストロゲンが減ると、このセロトニンも一緒に減ってしまいます。
つまり、「心のブレーキオイルが切れている状態」。
これでは、少しの坂道(ストレス)でも暴走してしまうのは当たり前です。あなたが悪いのではなく、単に「オイル不足」なだけ。そう思うと、少し気が楽になりませんか?
更年期にソワソワする理由【東洋医学編】「気逆」と「肝」の乱れ

次は、東洋医学の視点で見てみましょう。東洋医学では、心と体はつながっていると考えます。
あなたのその「ソワソワ」は、体の中のエネルギーである「気(き)」の流れにヒントがあります。
体がまるで沸騰したヤカン?気が頭にのぼる「気逆(きぎゃく)」とは
東洋医学には「気逆(きぎゃく)」という言葉があります。
本来、下半身にあって体を温めるべきエネルギー(気や熱)が、行き場を失って上半身、特に頭の方へ逆流してしまう状態です。
今のあなたの体は、「沸騰したヤカン」のようなもの。
お湯(感情や気)がグラグラと煮えたぎり、蓋がカタカタと音を立てて浮き上がっている……これが「ソワソワ」の正体です。
- 頭は熱くていろいろ考えすぎてしまう(のぼせ・不安)
- 足元は冷えて地に足がつかない(冷え・焦り)
このアンバランスさが、理由のない不安感を作り出しています。
感情のコントロールセンター「肝(かん)」がキャパオーバーを起こしている
また、東洋医学で自律神経や感情のコントロールを司るのは「肝(かん)」という場所です。
「肝」はストレスにとても敏感。
長年の仕事、家事、育児、介護……あなたが今まで頑張り続けてきた疲労の蓄積により、「肝」がキャパオーバーを起こし、気の巡りをスムーズに保てなくなっています。
気がスムーズに流れないと、体の一部で渋滞を起こし、それがイライラやソワソワとなって爆発してしまうのです。
これは、あなたが今まで誰かのために一生懸命頑張ってきた証拠でもあります。まずは「肝」をいたわり、渋滞を解消してあげることが大切です。
ソワソワする夜に試して。高ぶった神経を鎮める「お守りケア」

原因がわかったところで、ソワソワして眠れない夜や、不安で押しつぶされそうな時に試してほしい、簡単な「お守りケア」をご紹介します。
意識を「下」に向けるだけ。気を鎮める呼吸のコツ
気が頭にのぼっている(気逆)時は、意識的に気を「下」に降ろしてあげましょう。
- 仰向けになるか、椅子にゆったりと座ります。
- おへその少し下(丹田)に手を当てます。
- 口から細く長く息を吐ききります。(体の中の悪いものを全部出し切るイメージで)
- 鼻から自然に息を吸います。
- 「吸う」時間の2倍の時間をかけて、ゆっくり「吐く」ことを繰り返します。
ポイントは、「頭の中にあるモヤモヤを、息と一緒に足の裏から外へ逃がす」イメージを持つこと。意識を頭ではなく、お腹や足元に向けるだけで、高ぶった神経がスッと落ち着いてきます。
頭寒足熱(ずかんそくねつ)で、頭にのぼった熱を足元へ逃がす
昔から健康の秘訣と言われる「頭寒足熱」。これは更年期のソワソワ対策にも非常に有効です。
- 足元を温める:レッグウォーマーを履く、足湯をする、足首を回す。
- 目元や首元を休める:ホットタオルなどで温め、頭部の緊張を解く。
足元が温まると、上に溜まっていた血液や気が下へと降りてきます。
「なんだか落ち着かない」と思ったら、まずは靴下を履き替えたり、足首をくるくる回したりしてみてください。物理的に血液を下に呼ぶことで、心のざわつきも不思議と静まっていきます。
ひとりで抱え込まないで。まずは体の声を「数値」で聞いてみましょう

ここまで読んで、「私のことだ」と感じた方もいれば、「まだ更年期なんて認めたくない」と思っている方もいるかもしれません。
「更年期」と認めるのは怖いけれど、正体がわかれば怖くない
「更年期」という言葉には、どうしても「老化」「女性としての終わり」といったネガティブなイメージがつきまといます。だからこそ、不調を感じても「認めたくない」と抵抗してしまうのは当然のことです。
でも、更年期は「終わり」ではなく、次のステージへ進むための「準備期間(体の衣替え)」です。
闇雲にお化けを怖がるように不安を感じる必要はありません。
「今の自分の体の中で、ホルモンがどれくらい減っていて、自律神経がどうなっているのか」
それを知ることは、決して怖いことではありません。むしろ、正体がわかれば、正しい対処法が見えてきます。
1分でわかる「体の通信簿」。まずはセルフチェックで自分をいたわって
今のあなたの辛さは、数値化することで「見える化」できます。
「私が我慢すればいい」と無理を重ねてしまう前に、まずは今の体の状態をチェックしてみませんか?
これは医学的な診断書ではなく、あくまで今のあなたのバランスを見るための「体の通信簿」のようなものです。
誰にも知られずに、スマホで1分ほどでチェックできます。
結果を見ることで、「なんだ、数値のせいだったんだ」と、ご自身を責める気持ちが少しでも軽くなれば嬉しいです。
まずは現状を知ること。それが、ソワソワのない穏やかな日々を取り戻すための、最初の一歩になりますよ。
