「二日酔いでもないのに、朝から胃がムカムカする」「パソコンを見ていると、急に船酔いのようなフワフワ感に襲われる」…そんな症状に悩んでいませんか?
病院に行くほどではないけれど、地味に辛いこの感覚。「私の体調管理が悪いから」「精神的に弱いから」と自分を責めてしまいがちですが、それは違います。
今日は、その「正体不明の気持ち悪さ」について、東洋医学の視点からお話しします。理由がわかれば、もう怖くありませんよ。
読み進める前に、まずは今の自分の「体の天気」を知っておきませんか?
今の辛さが「あなたのせいではない」ことが、数値を見るだけですぐに分かります。
たま先生(中森 万美子)
「中森万美子鍼灸院」院長、「たま お悩み相談室」代表カウンセラー。 東洋医学で体を整え、カウンセリングで心に寄り添う「心身一如」のケアが信条。 FM845パーソナリティ。SNSフォロワー4万人超。著書『40歳からの幸せの法則』。
- 1. 病院へ行くほどじゃないけど…「更年期特有の気持ち悪さ」の正体
- 1.1. 朝のムカムカ、食後の胃もたれ、乗り物酔いのような浮遊感
- 1.2. さっきまで元気だったのに…急なイライラとセットで来る「吐き気」
- 2. なぜこんなに気持ち悪くなるの?医学と東洋医学で見る「辛さの原因」
- 2.1. 【医学的視点】自律神経の乱れが引き起こす「脳の誤作動」
- 2.2. 【東洋医学的視点】エネルギーが逆走する「気逆(きぎゃく)」とは?
- 2.3. あなたの能力不足でも、性格が変わったわけでもありません
- 3. 今すぐできる!「気持ち悪さ」をその場で和らげる養生テクニック
- 3.1. 上に上がった気を下ろす「グラウンディング呼吸法」
- 3.2. 吐き気止めのツボ「内関(ないかん)」と「太衝(たいしょう)」
- 3.2.1. 内関(ないかん)
- 3.2.2. 太衝(たいしょう)
- 3.3. 「ま、いっか」を口癖に。心を緩める魔法
- 4. ひとりで抱え込まないで。まずは「数値」で自分の状態を知ることから
- 4.1. 「更年期」と認めるのが怖いあなたへ
- 4.2. 1分で完了!無料セルフチェックで「体の天気予報」を見てみましょう
病院へ行くほどじゃないけど…「更年期特有の気持ち悪さ」の正体

「なんだか最近、調子が悪い気がする」
そう感じていても、熱があるわけでもないし、激痛があるわけでもない。「ただなんとなく、気持ち悪い」。そんな状態だと、誰かに相談するのもためらってしまいますよね。
でも、私の鍼灸院にいらっしゃる患者さんの多くが、あなたと同じように言葉にしづらい「不快感」を抱えていらっしゃいます。まずは、あなたが感じているその辛さが、決して「気のせい」ではないことを確認していきましょう。
朝のムカムカ、食後の胃もたれ、乗り物酔いのような浮遊感
例えば、こんなことはありませんか?
朝起きると、胃が重い
前の晩に暴飲暴食をしたわけでもないのに、朝起きた瞬間から胃のあたりがドンヨリしている。
喉の奥の違和感
常に喉に飴玉か梅干しの種が詰まっているような感じがして、飲み込もうとしても飲み込めない(これを東洋医学では「梅核気(ばいかくき)」と呼びます)。
謎の乗り物酔い
昔は平気だったのに、電車やバス、あるいはスマホの画面をスクロールしただけで、グラグラと世界が回るようなめまいや吐き気を感じる。
これらは、「病気」という名前がつく手前にある、体からの精一杯のサインであることが多いのです。胃薬を飲んでもなかなかスッキリしないのは、胃そのものが悪いのではなく、もっと根本的なバランスが崩れているからかもしれません。
さっきまで元気だったのに…急なイライラとセットで来る「吐き気」
そして、更年期世代の女性を特に苦しめるのが、感情と連動する「気持ち悪さ」です。
さっきまで家族と普通に話していたのに、些細な一言でマグマのような怒りが込み上げてくる。そして、激しくイライラした直後に、みぞおちがギュッと締め付けられるような吐き気に襲われる…。
その後でやってくるのは、「こんなに感情的になるなんて、私、性格が悪くなったのかな」「ヒステリーを起こす自分が気持ち悪い」という、自分自身への嫌悪感ではないでしょうか。
辛いですよね。でも、安心してください。
そのイライラも、その後の吐き気も、あなたの性格が変わったからではありません。
体が急激な変化に対応しようとして、一時的に交通渋滞を起こしているだけなのです。
なぜこんなに気持ち悪くなるの?医学と東洋医学で見る「辛さの原因」

「私の性格のせいじゃないなら、一体なぜ?」
その疑問を解くカギは、医学的な「自律神経」の働きと、東洋医学的な「気(エネルギー)」の流れにあります。
このメカニズムを知れば、「なんだ、私の体が頑張りすぎているだけなんだ」と、自分を許してあげられるはずですよ。
【医学的視点】自律神経の乱れが引き起こす「脳の誤作動」
私たちの体は、脳にある「視床下部(ししょうかぶ)」という司令塔がホルモンの指令を出しています。
40代以降、卵巣の機能が少しずつ変化し始めると、脳が「ホルモンを出して!」と指令を出しても、卵巣が以前のようには応えられなくなります。
すると、司令塔である脳はパニックを起こします。「なんで言うことを聞かないの!?」と興奮状態になり、その混乱がすぐ隣にある「自律神経」に飛び火してしまうのです。
自律神経は、胃腸の働きや血流をコントロールしている大切なシステムです。
脳のパニックによって、体を活発にする「交感神経」が過剰に働くと、胃腸は緊張して動きを止めてしまったり、逆に痙攣(けいれん)したりします。
つまり、あなたの感じている吐き気や気持ち悪さは、脳の誤作動によって胃腸がびっくりしている状態。あなたがストレスに弱いからではなく、脳と卵巣の連携プレーが一時的にうまくいっていない物理的な現象なのです。
【東洋医学的視点】エネルギーが逆走する「気逆(きぎゃく)」とは?
東洋医学の視点で見ると、さらに景色がはっきりと見えてきます。
あなたの今の状態は、「気逆(きぎゃく)」という言葉で説明がつきます。
私たちの体には「気(き)・血(けつ)・水(すい)」が巡っていますが、そのうちのエネルギーである「気」は、本来、頭から足元へと「下半身に向かって降りていく」のが健康な状態です。
しかし、更年期(あるいはプレ更年期)に入り、体のバランスが崩れると、下に降りるべき気が行き場を失い、あろうことか「上に向かって逆流」し始めます。
- 気が胃から喉へ逆流する → 吐き気、ゲップ、喉のつかえ
- 気が頭へ逆流する → のぼせ、ホットフラッシュ、めまい、イライラ
想像してみてください。一方通行の道路を、たくさんの車が逆走している状態です。これでは事故(不調)が起きるのも無理はありませんよね。
さらに、東洋医学には「肝胃不和(かんいふわ)」という言葉もあります。
ストレスを受け止める「肝(かん)」の気が高ぶりすぎると、そのエネルギーが消化器である「胃」を攻撃してしまうのです。
「イライラすると吐き気がする」のは、まさにこの現象。心と体は繋がっているからこそ起こる、必然的な反応なのです。
あなたの能力不足でも、性格が変わったわけでもありません
ここまで読んで、「なんだか難しそう」と思われたかもしれませんが、覚えておいてほしいことは一つだけ。
今の不調は、あなたの能力不足でも、性格の歪みでもないということです。
体の内部で起きている「気の交通渋滞」や「自律神経のパニック」が、たまたま「気持ち悪さ」という形で表面化しているだけ。
それは、「少し休んで、体のメンテナンスをしてね」という、体からの愛あるメッセージなんですよ。
今すぐできる!「気持ち悪さ」をその場で和らげる養生テクニック

原因がわかったところで、日々の生活の中でできる「養生(ようじょう)」をご紹介します。
「治療」と構える必要はありません。ほんの少し、体に意識を向けてあげるだけで、逆流した気はまたスムーズに流れ始めます。
上に上がった気を下ろす「グラウンディング呼吸法」
「気逆」で上に上がってしまったエネルギーを、意識的に下に下ろす呼吸法です。気持ち悪い時や、イライラした瞬間に試してみてください。
- 椅子に浅く座り、足の裏を床にぺったりとつけます。
- 鼻から軽く息を吸います。
- 口から細く長く息を吐きながら、「頭にあるモヤモヤしたものが、背骨を通って、足の裏から地面に流れ出ていく」イメージを持ちます。
- 吐き切ったら、自然に吸う。これを5回ほど繰り返します。
ポイントは「吐く息」に集中すること。息を吐くことで副交感神経が優位になり、胃腸の緊張もふっと緩みます。
吐き気止めのツボ「内関(ないかん)」と「太衝(たいしょう)」
いつでもどこでも押せる、あなただけの「お守り」のようなツボを知っておきましょう。
内関(ないかん)
場所: 手のひら側、手首のシワから指3本分ひじ側へ進んだところ。
効果: 吐き気、胃の不快感、乗り物酔いに効果的と言われています。親指でじわーっと、少し強めに押してみてください。
太衝(たいしょう)
場所: 足の甲、親指と人差し指の骨が交わるところ(V字の谷間)の少し手前のくぼみ。
効果: 「イライラ」を鎮め、気の巡りをスムーズにする代表的なツボです。ここを押して痛い人は、頑張りすぎている証拠かもしれません。
「ま、いっか」を口癖に。心を緩める魔法
更年期の症状が強く出やすい方は、真面目で責任感が強く、頑張り屋さんな女性が多い傾向にあります。
「ちゃんとしなきゃ」「私がやらなきゃ」
そんなふうに無意識に体を固くしていませんか?
体が変化している時期は、心も少しだけ「省エネモード」に切り替えるチャンスです。
家事が少し残っていても、仕事で小さなミスがあっても、「ま、いっか。今はそういう時期だし」と、心の中でつぶやいてみてください。
完璧を目指さないこと。自分に60点をあげられるようになること。
それが、高ぶった神経を鎮める一番の「薬」になることもあります。
ひとりで抱え込まないで。まずは「数値」で自分の状態を知ることから

ここまで、東洋医学の視点で「気持ち悪さ」の正体をお話ししてきました。
少しでも「私だけじゃなかったんだ」と、心が軽くなっていただけたら嬉しいです。
「更年期」と認めるのが怖いあなたへ
正直なところ、「更年期」という言葉を受け入れるのには、勇気がいりますよね。
「老化」や「女の終わり」のような気がして、認めたくない気持ち、痛いほどわかります。
でも、東洋医学では更年期を「その人の役割が変わる、次のステージへの準備期間」と捉えます。決してネガティブな終わりではありません。
「何が起きているかわからない」という状態が、一番不安を大きくします。
逆に言えば、自分の体の状態さえ把握できれば、対策はいくらでも立てられるのです。
1分で完了!無料セルフチェックで「体の天気予報」を見てみましょう
まずは今のあなたの状態を、客観的にチェックしてみませんか?
このセルフチェックは、病名を決めるものではありません。
今のあなたの体が「晴れ」なのか「雨」なのか、あるいは「台風」が近づいているのかを知るための「体の天気予報」のようなものです。
「なんでこんなに辛いの?」と自分を責めるのは、もう終わりにしましょう。
あなたのその辛さが数値化されることで、「なーんだ、私のせいじゃなくて、体のバランスのせいだったんだ」と、肩の荷が下りる瞬間が必ず来ます。
たった1分で終わります。
まずは自分を知ることから、一緒に始めてみましょう。
