「毒親 ご飯作らない」と検索窓に打ち込んだあなたは、たぶん今日まで、自分の子ども時代を「うちの親も大変だったし」「ご飯くらいでこんなに引きずる私が変なのかも」と、何度も封じ込めてきたのではないでしょうか。
冷蔵庫を開けても何もなかった夜のこと。お腹がすいて眠れなかった夜のこと。自分のぶんだけ用意されなかった食卓のこと。それを誰かに話そうとしても「贅沢な悩みだよ」「いまどき餓死した人はいない」で打ち切られてきた経験が、あなたにもあるかもしれません。
今日この画面を開いてくださったあなたへ、最初にお伝えしておきたいことがあります。「親がご飯を作らなかった」というのは、外から見えにくいけれど、確かにあなたの人生に深い傷を残すネグレクトなんです。それは、あなたが甘いからでも、記憶を盛っているからでもありません。
この記事は、毒親かどうかを判定するチェックリストではありません。カウンセラーの立場から、ご飯を作らなかった親の4つの類型、いまのあなたに残っている食への違和感の正体、そして自分の食をもう一度自分の手に取り戻していくための具体的な道筋を、じっくりお伝えしていきます。
読み終わったとき、あなたが台所のあかりの下で、少しだけ深く息をできるようになっていたらうれしく思います。
目次
たまお悩み相談室
カウンセラー

年間500件以上のお悩みに寄り添うカウンセラー。解決を押しつけるのではなく、ご相談者様にとって「心を整える場所」となることを目指したサポートを行っている。SNS総フォロワー数は4万人を超え、著書『40歳からの幸せの法則』の執筆や、FM845のラジオパーソナリティ、大学やカルチャーセンターでの講師など幅広く活動中。
「ご飯がなかった」を、大したことじゃないと思わないでください
「ご飯を作ってもらえなかった」と話すと、多くの場面で「でも生きてるじゃない」「服も着てたんでしょう」と返されてしまいます。そのたびに、あなたは自分の苦しさに「大したことない」というラベルを貼り直してきたのかもしれませんね。
まずはその構造から、一緒にほどいていきましょう。
食卓の不在は、外から見えにくい傷です
殴られた跡、怒鳴られた言葉、目に見えるネグレクト。そういった親の問題は、まだ誰かに伝えやすい部分があります。
ところが「ご飯がなかった」というのは、痩せていなければ気づかれません。学校給食でなんとか命をつないでいた子。コンビニの100円のおにぎりでお腹を満たしていた子。冷たいご飯にお茶をかけて毎晩食べていた子。外から見ると、ふつうに育っているようにしか映らないんです。
だから誰にも気づかれず、本人すら「うちはふつう」と思い込まされていく。この見えなさが、ご飯を作らない親による傷を、何十年も長引かせる大きな原因なんですよ。
50代のある女性は、こう話してくださいました。「母は専業主婦だったんです。だから誰にも信じてもらえなくて。専業主婦の母が、毎日子どもにカップ麺だけ渡して自分は外食、なんて言っても『そんな家あるわけない』って」。専業主婦という肩書きは、食卓の中身までは保証してくれないんです。
「育ててもらった」と「お腹がすいていた」は両立する
カウンセリングで、子ども時代の食について話してくださる方が、必ずどこかで言うことがあります。「でも、ご飯を全く食べてないわけじゃないんです」「学校には行かせてもらいましたし」。
その気持ちは自然なものです。ただ、「育ててもらった」と「お腹がすいていた」は、足し引きするものではなく、両方が同時にあったという事実なんです。
ランドセルを買ってもらった事実と、夕飯にしらすご飯だけを毎晩食べていた事実は、別々に存在していい。前者があるからといって、後者を消す必要はないんですよ。
「ご飯くらいで」と自分を黙らせてきたなら、今日からは黙らせなくていいんです。お腹がすいていたあの頃の自分に、ようやく声をかけてあげる準備が整ってきた、ということでもありますから。
違和感を抱いたいまが、整理を始める出発点
ご飯にまつわる違和感は、自分が親になったとき、結婚したとき、誰かと食卓を囲むようになったときに、ふいに噴き出すことが多いです。
子どもが「お腹すいた」と無邪気に言うのを聞いて、なぜか胸が苦しくなる。パートナーが当たり前のように三食食べる姿を見て、奇妙な違和感を覚える。自分のためだけに料理することに、強い抵抗を感じる。
そういう違和感に気づき始めたいまが、あなたが自分の食と人生を取り戻していく出発点なんです。気づくのに何十年かかってもいいんですよ。
ご飯を作らなかった親の「4つの類型」
「ご飯を作らない親」とひと口に言っても、その背景はまったく違います。背景が違えば、子どもに残る傷の手触りも違ってきます。
ここでは、相談現場でよく見聞きする4つの類型を整理します。「うちの親はどれだろう」と当てはめながら読んでみてください。複数が重なっているケースもよくありますよ。
①意図的ネグレクト型|罰として食事を抜く親
このタイプの親は、食事をコントロールの道具として使います。「成績が下がったから今日は夕飯抜き」「口答えしたからお弁当は作らない」「気に入らないから自分の分は作っても子どもの分は作らない」。
食事を与えるかどうかが、親の機嫌や子どもの態度によって決められる。これは、最も外から見えにくい虐待のひとつなんです。
40代のある女性は、いまでも夕方の空気がつらいと話してくださいました。「学校から帰ると、母の機嫌で夕飯があるかないかが決まるんです。玄関を開けるとき、味噌汁の匂いがしたら『今日はある日』、なんの匂いもしなかったら『ない日』。あの玄関の匂いを嗅ぎ分ける緊張感は、いまでも夕方になると体に蘇ってきます」。
意図的ネグレクト型の親に育てられると、食事という最も基本的な安心が、いつ取り上げられるか分からないものとして刻まれてしまいます。これは大人になってからも、深い影響を残し続けます。
②無関心・育児放棄型|子どもがいることを忘れたような親
このタイプは、悪意があるというよりも、子どもの存在そのものへの関心が薄い親です。趣味や恋愛、仕事や友人関係に夢中で、子どもの食事まで意識が向かない。
「お母さんは外で食べてくるね」とだけ告げて、子どもにお小遣いを置いて出ていく。冷蔵庫には何もなく、台所には汚れた食器だけ。子どもは自分でカップ麺を作るか、近所の駄菓子屋でしのぐ。子どもは「うちはこういう家なんだ」と諦めて、自分で自分のご飯を調達するようになります。自立というより、放置に対する適応反応なんです。
40代のある女性は、当時を振り返ってこう話してくださいました。「小学校3年生のときから、自分の夕飯は自分で作ってました。卵かけご飯と、味噌をお湯で溶いた汁。誰にも褒められないし、誰も気にしてない。だから、いまでも誰かに『ご飯どうしてる?』と聞かれるだけで泣きそうになるんです」。
③精神疾患・アディクション型|余裕を失っていた親
このタイプは、親自身が病気や依存症の中にいて、料理をする余力が物理的になかったケースです。うつ病で布団から出られない母。アルコール依存症で日中から飲んでいた父。ギャンブル依存で家にいない親。
子どもの目には「料理を作らない親」として映ります。でも背景には、親自身の病があった。これに気づくのは、たいてい大人になってからです。子ども側には「親を責めきれない」という独特の苦しさが残ります。
ただ、親に事情があったことと、あなたが食卓のない子ども時代を生きたことは、別のレイヤーに置いていい事実です。親を責めなくていいけれど、自分の傷は認めてあげてくださいね。
④経済的困難型|食卓を整える力が物理的に足りなかった親
シングル家庭で親が深夜まで働いていた。借金や貧困で食材を買えなかった。さまざまな経済的事情で、親の意思とは別に食卓が整えられなかったケースもあります。
この類型は「親が悪い」とは言いきれない部分があります。それでも、子ども側に「お腹がすいていた事実」「家に帰っても食卓がなかった事実」は確かに残るんです。
50代のある女性は、母を責められないことが逆に苦しかったと話してくださいました。「母は本当に頑張ってたんです。でも、夜中に帰ってきた母が用意してくれるおにぎり一個では、育ち盛りの私のお腹は満たされなかった。母を悪者にしたくない気持ちと、自分の空腹を認めたい気持ちが、長いあいだ自分の中でぶつかってました」。
親を責めずに、それでも自分の傷を認める。この同居が、経済的困難型育ちの大人にとっての整理の鍵になります。
ネグレクト型育ちの大人に残る「5つの傷」
ご飯を作らない親に育てられた子どもは、大人になってから、特有の生きづらさを抱えやすいんです。「私が弱いから」と片付けてきたあれこれが、実は育ちの構造から来ているものだったりします。
ここでは、相談現場でよく出会う5つの傷を整理しておきますね。
①食への複雑な感情|過食・拒食・空腹耐性の歪み
ご飯がなかった育ちの大人は、食との関係が独特の歪みを持ちやすいです。
ある人は、目の前に食べ物があると止まらない。子ども時代の「あるうちに食べておかないと、次がいつかわからない」という感覚が、体に染みついている。これは意志の弱さではなく、サバイバル反応なんです。
ある人は、空腹を感じる感度が異常に低い。「お腹すいた」を感じる前に、もう倒れそうになっている。子どもの頃、空腹を感じても誰も応えてくれなかったから、感覚そのものを切り離してきた結果なんです。
ある人は、自分のために食べることに罪悪感を覚える。家族が残した食べ物しか食べられない。新品の食材に手をつけられない。これも、自分の食欲を持つことを許されてこなかった育ちの名残です。
過食、拒食、自分の食欲を感じ取れないこと。どれもあなたが弱いのではなく、子ども時代の食卓の歴史が、いまの体にまだ残っているということなんですよ。
②自分のケアの仕方が分からない
ご飯を作ってもらった経験が乏しい人は、「自分を養う」というスキル全般が育ちにくい傾向があります。疲れたときに何を食べればいいか分からない。風邪をひいたとき、自分のために食事を整えられない。
子どもは、親に手当てされる経験を通して「自分の手当ての仕方」を学びます。その経験が薄ければ、大人になってから自分のケアができないのは、自然なことなんですよ。
40代のある女性は、こう打ち明けてくださいました。「インフルエンザで寝込んだとき、何も食べずに2日寝てたんです。夫が帰ってきて『なんで連絡しないの』と泣かれて、初めて気づきました。私、自分のために誰かに頼んでいいって発想がなかったんだなって」。
③人に頼ることができない
「お腹がすいた」と言っても応えてもらえなかった経験は、人に頼ることへの根本的な不信を残します。
職場で困っても助けを求められない。夫に体調不良を伝えられない。「言っても無駄」「私が我慢すればいい」が、口癖のようになっている。これは性格ではなく、頼ったあとの肩透かしや無視を、何百回と経験してきた結果なんです。
④家族・パートナーへの過剰補償
ご飯を作ってもらえなかった人が大人になり、家族を持ったとき、極端に手の込んだ料理を作り続けてしまうことがあります。子どものお弁当に毎日キャラ弁。仕事から帰っても必ず手作りの夕飯。
「自分がしてもらえなかったぶん、子どもには」という気持ちは自然なものです。ただ、その動機の根が「私はしてもらえなかった」という痛みからきているとき、あなた自身がいつまでも休めない構造になっていきます。過剰補償に気づいたら、自分の食卓も、もう少しゆるめていいんですよ。
⑤「お腹すいた」と言うことへの罪悪感
これは、ご飯を作らない親に育てられた人の、もっとも繊細で見落とされがちな傷です。
大人になっても、「お腹すいた」「これが食べたい」と口に出すことに、強い罪悪感や恥ずかしさを覚える。レストランでメニューを選ぶとき、自分の食べたいものより値段で選んでしまう。誰かと食事に行っても、相手に合わせて自分の食欲を縮めてしまう。
子ども時代に「お腹すいた」と言って、無視されたり、怒られたり、迷惑そうな顔をされた記憶が、体に残っているんです。だから、いまでも「お腹すいた」を声にするのが怖い。
50代のある女性は、こう話してくださいました。「夫と結婚してしばらく経ったある日、お夕飯の前に夫が『今日は何が食べたい?』って聞いてくれたんです。私、その瞬間、答えが出てこなくて泣いちゃったんです。自分が食べたいものを聞かれた経験が、人生で初めてだったって、そのとき気づいたんです」。
自分の食を取り戻すための「5つのステップ」
ここからは、子ども時代に持てなかった食卓を、大人になったあなたが自分の手で組み直していくための、具体的なステップをお伝えしていきますね。
完璧を目指さなくて大丈夫。一日のうち一食でも、一週間のうち一回でも、できるところから始めてみてください。
①温かい食事を儀式化する
最初のステップは、温かいものを、自分のために、決まった時間に食べることです。
冷たいご飯やコンビニのおにぎりが悪いわけではありません。ただ、子ども時代に「冷たいまま食卓に置かれたご飯」を食べてきた人にとって、温かい食事を自分のために用意することは、過去の自分への手紙のような意味を持つんです。
夜にコンビニで温めてもらう。朝、お湯を注ぐだけのスープを飲む。ティーバッグでもいいから、自分のための一杯を淹れる。それを毎日同じ時間にする。これだけで、体は「養ってもらえる」感覚を少しずつ取り戻していきます。
「ちゃんとした手料理を作らないと」と気負わなくていいんですよ。温かいことと、自分のためであることだけ、最初は意識してみてくださいね。
②「食べたい」を声に出す練習
第二のステップは、「食べたい」を口に出すことに慣れていくことです。
最初は独り言で構いません。台所で「あ、温かい味噌汁が飲みたいな」と声に出してみる。コンビニで棚を見ながら「今日はこれが食べたい気分」と心の中でつぶやく。
慣れてきたら、信頼できる相手に伝えてみる。夫やパートナー、親しい友人に「今日はラーメンが食べたい」「アイスが食べたい」と伝える練習。最初はぎこちなくて、変なテンションになるかもしれません。
それでもいいんです。「食べたい」を声にして、それを誰かに受け取ってもらう経験を積み重ねることが、あなたの中の「お腹すいた」と言えなかった子どもを、少しずつ取り戻していきますから。
③栄養より「自分を養う」感覚を優先する
第三のステップは、栄養バランスや食事の正解にとらわれすぎないことです。
ネグレクト型育ちの人は、いざ食を立て直そうとすると、極端に「ちゃんとしなきゃ」モードに入りがちです。一汁三菜、糖質オフ、無添加、手作り。やりすぎて続かなくなり、また自己嫌悪に戻ってしまう。
最初に育てたいのは、栄養のスコアではなく、「自分を養っている」という感覚そのものなんです。コンビニのお惣菜でも、レトルトでも、外食でも、それを「自分のために用意した」という意識で食べる。それで十分、心の食卓は組み直されていきます。
栄養は、後からついてきます。まずは「自分を養う」体験を、量より頻度で積み重ねてくださいね。
食卓を、自分の手で組み直していく
5ステップの後半は、食事の中身そのものよりも、「誰と」「どんな場で」食べるか、という部分に焦点を当てていきます。
子ども時代の食卓を取り戻す作業は、結局のところ、自分の人生に新しい食卓を立て直していく作業でもあるんです。
食卓を共にする相手を、自分で選ぶ
第四のステップは、誰と食卓を囲むかを、自分で選び直すことです。
子ども時代、食卓は選べないものでした。沈黙の食卓、機嫌の悪い親と向き合う食卓、誰もいない食卓。それは子どものあなたにとって、選択の余地がない場所だった。
でも、大人になったあなたには、選ぶ権利があります。安心して食事ができない相手とは、可能な範囲で食卓を別にしていい。逆に、食事の時間が穏やかになる相手とは、意識して食卓をともにしていい。
実家に帰省したときに食事のたびに過去の傷が疼くなら、外食でしのぐ、滞在を短くする、食事を共にしない時間帯に動く。そんな工夫も、立派な「食卓を選び直す」行為なんです。
ひとりで穏やかに食べる時間も、大切な選択です。「誰かと食べないとさみしい人」と思われるのが嫌で、無理して人と食卓を囲んできた方も、いったんひとりの食卓を取り戻してみてくださいね。
栄養士・摂食障害カウンセリングを使う選択肢
過食、拒食、極端なやせ、食事を抜くことが続く、食事のたびに動悸がする。こうした症状が日常生活に影響しているなら、専門家のサポートを受けることも、ぜひ選択肢に入れてください。
公認の栄養士・管理栄養士による相談、摂食障害に対応するクリニックや精神科、心療内科。日本摂食障害協会のような団体は、相談できる医療機関を探す手助けをしてくれます。
「ご飯くらいで病院」と感じる必要はありません。長年の食との関係を、自分ひとりで立て直すのは本当に難しい作業なんです。育ちと食を一緒に整理してくれる専門家に、力を借りていいんですよ。
カウンセリングでも、食の傷についてはよく扱う領域のひとつです。「食について話していいんだろうか」と迷う方ほど、話してみると整理が一気に進むことも多いです。
自分の子に、同じことをしないために
ご飯を作らない親に育てられた人が、自分の子どもに対して抱きやすい不安があります。「私は、自分の子に同じ思いをさせていないだろうか」。
ここでは、その不安をやわらげる視点をお伝えしていきますね。完璧な食卓を目指すことが、必ずしも子どもの安心にはつながらないんです。
「ちゃんと作らなきゃ」を手放していい
ネグレクト型育ちの人は、子どもへの食事を、極端に頑張ろうとしがちです。手作り、品数、栄養、彩り、添加物。基準が際限なく上がっていって、毎晩自分が倒れそうになっていませんか。
「ちゃんと作らないと、子どもがかわいそう」という呪いの裏には、「自分は作ってもらえなかった」という悲しみが隠れていることが多いんです。あなたが自分の子どもに与えたいのは、本当は完璧な食卓ではなく、安心できる時間ではないでしょうか。
毎晩しっかり手作りしようとして、夕方からイライラして子どもにつらく当たるくらいなら、惣菜を温めてゆっくり子どもの話を聞いてあげるほうが、心の食卓としては豊かなんですよ。
買ってきた惣菜への罪悪感を、そっと下ろす
スーパーの惣菜、冷凍食品、レトルト、テイクアウト。「手抜きしてる気がして、後ろめたい」と感じる方は本当に多いです。
でも、子ども時代に「ちゃんと作るお母さんが理想」と刷り込まれてきた世代ほど、その思い込みが強く残っています。実際には、買ってきた惣菜を温めて、家族で笑いながら食べる食卓のほうが、無言の手作り食卓より、よほど子どもの心を育てます。
40代のある女性は、こう話してくださいました。「最初は冷凍餃子を出すたびに、子どもに謝っていたんです。『ごめんね、お母さんちゃんと作れなくて』って。でもある日、子どもが『冷凍餃子のとき、お母さん機嫌いいから僕は好きだよ』って言ってくれて。そこから、罪悪感を下ろしてもいいんだって思えるようになったんです」。
買ってきた惣菜は、あなたの愛情の不足ではなく、家族の時間を守るための工夫なんです。罪悪感を、そっと下ろしていきましょうね。
子どもに残るのは、品数ではなく「一緒に食べた記憶」
大人になったあなたが、子ども時代の食卓を思い出すとき、覚えているのは品数や栄養バランスでしょうか。それとも、家族の表情や、交わされた言葉、食卓の空気でしょうか。
子どもの心に残るのは、後者なんです。冷凍食品の夜だったとしても、笑い合った夕食の記憶は、何十年も残ります。逆に、品数が多くても無言で重い食卓は、ずっとつらい記憶として残り続けます。
あなたが子どもに渡したい「思い出のごはん」は、料理の難易度ではなく、食卓の温度で決まる。これだけは覚えておいてくださいね。
不器用でもいい、簡単でもいい、毎日同じメニューでもいい。一緒に食べた、笑った、話した。それだけで、子どもの心の食卓には、温かい記憶が積み上がっていきます。
一人で抱えないでください|第三者を頼る選択肢
ここまで読んでくださって、ありがとうございます。最後に、もっとも大切なお話をさせてくださいね。
ご飯を作らなかった親のもとで育った傷は、一人で抱え続けるには、本当にしんどいものです。誰かに話す、専門家を頼る。それは決して逃げではありません。
「思い出のごはん」の不在を、誰かと弔う
「思い出のごはん」という言葉があります。子ども時代に親が作ってくれた、あの料理。盆や正月、誕生日、風邪のとき。多くの人にとって、人生のどこかに必ずある、心の中の温かい一皿。
それが、あなたにはない。「思い出のごはん」を語るシーンになると、急に居場所をなくしたような気持ちになる。テレビで誰かが「お母さんの卵焼きが世界一」と話すたびに、胸の奥がきしむ。
その不在は、あなたの欠陥ではなく、確かにあった喪失です。喪失は、誰かと一緒に弔うことで、ようやく形を持ち始めます。心の中で泣くだけでなく、信頼できる誰かに「私、思い出のごはんがないんです」と打ち明けてみる。
その一言で泣けたら、それはあなたの中の「お腹がすいていた子ども」が、ようやく抱きしめられた瞬間なんですよ。
カウンセラーに話すと整理できる3つのこと
カウンセリングは、食と育ちの整理にも、とても向いている場です。私が現場でお手伝いしていることは、大きく3つあります。
ひとつめは、親の事情と、あなたが受けた傷を、丁寧に切り分けていく作業です。「親も大変だった」と「私もつらかった」が両立していい場所で、両方をそのまま受け止めていきます。
ふたつめは、いまの食への違和感、過食や拒食、自分のケア不足、過剰補償といった大人の症状と、子ども時代の食卓の歴史を、つなぎ直していく作業です。原因が分かるだけで、自分を責めにくくなります。
みっつめは、これからどう自分の食卓を組み直していくか、あなたのペースに合わせた具体策を一緒に考えることです。一人で頑張ろうとすると挫折しがちな部分を、伴走者がいるとずっと続けやすくなります。
公的な相談窓口・専門機関の選択肢
カウンセリングのハードルが高いと感じる方、まずは無料の相談窓口を試したい方のために、選択肢をお伝えしておきますね。詳しい連絡先は、この記事の末尾にもまとめてあります。
匿名で電話できる窓口は、夜中に過去の食卓の記憶がよみがえって眠れない夜の、命綱になります。「子ども時代のことで苦しい」と伝えるだけで、専門の相談員が話を聞いてくれます。
摂食障害の症状が日常に影響しているなら、日本摂食障害協会のサイトで、お住まいの地域の医療機関を探すことができます。地域の精神保健福祉センターでは、無料で心理士に相談できる場合もあります。各自治体のホームページで「こころの相談」と検索してみてくださいね。
まとめ|あなたが、あなた自身を養えるようになるために
ここまで、ご飯を作らなかった親の4類型、大人になったあなたに残る5つの傷、自分の食を取り戻す5つのステップ、自分の子に同じことをしないための工夫を、整理してきました。最後に、いちばん大切なことをお伝えします。
過去の食卓は、もう取り戻せません。子ども時代に空腹だった夜の数を、いまから減らすことはできない。それは厳然とした事実なんです。
でも、これからのあなたの食卓は、あなた自身が組み直していけます。温かい一杯のお茶、自分のためのお味噌汁、安心できる人と囲む夕飯。少しずつ、少しずつ、新しい食卓を積み重ねていく。それは、過去のあなたの空腹を、未来のあなたが満たし直していく作業でもあるんですよ。
「ちゃんとした手料理を毎日作る」という呪いを下ろしてください。冷凍食品で笑える夕飯のほうが、無言の手作り食卓より、ずっと豊かな記憶になります。
そして、ここまで耐えてきたあなた自身を、誰よりも先に養ってあげてくださいね。家族のためでも、子どものためでもなく、お腹がすいていたあの頃のあなた自身に、温かいものを差し出してあげる時間を、これからは少しずつ増やしてください。
一人で抱え込みそうな日があったら、いつでも、たま先生のところに話を聞きに来てくださいね。
安心して話せる場所|公的な相談窓口の選択肢
家族関係や食にまつわる心の不調は、個別のケースによって状況が大きく異なります。深い苦しさを感じる日が続くとき、食事のたびに動悸がするとき、過去の食卓の記憶で眠れない夜があるときは、ためらわずに専門の窓口や医療機関を頼ってくださいね。
24時間・無料で話せる電話相談
よりそいホットライン(24時間・無料、0120-279-338)は、家族関係や子ども時代の傷を含む、あらゆる悩みを匿名で話せます。「子ども時代のことで」と伝えれば、専門の相談員が対応してくれます。
こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)は、お住まいの地域の公的な精神保健窓口につながります。日中の相談に向いています。
いのちの電話(ナビダイヤル 0570-783-556)は、地域ごとに番号が異なるため、一般社団法人日本いのちの電話連盟の公式サイトで最寄りの番号もあわせてご確認ください。
摂食・食の症状にかかわる相談
過食、拒食、極端なやせ、食事のたびの強い不安など、食の症状が日常に影響しているときは、日本摂食障害協会のウェブサイトから、対応可能な医療機関を探すことができます。
各自治体の精神保健福祉センター、保健所、地域の臨床心理士・公認心理師事務所も、家族関係と食の悩みの相談を受け付けています。「個別のケースは、必ず専門家にご相談くださいね」とお伝えしておきますね。
たまお悩み相談室
カウンセラー




