今、この記事を読んでくださっているあなたは、きっと心の中で「なんで私、こんなにイライラしちゃうんだろう」「性格が変わったのでは」と、ご自身を責めているかもしれませんね。
ささいなことでついキツく当たってしまったり、集中力が続かず自己嫌悪に陥ったりすることもあるでしょう。
でも大丈夫、あなたの頑張りが足りないわけでも、性格が悪くなったわけでもありません。
その辛さは、あなたの体の奥深くで起きている大切なサインで、多くの女性が経験する「更年期のゆらぎ」と深く関係している可能性があります。
まずは、イライラの背景と、手軽に、誰にも知られずに始められる対策を詳しく見ていきましょう。
ご自身の状態を整理することが、心が穏やかになるための最初の一歩です。
たま先生(中森 万美子)
「中森万美子鍼灸院」院長、「たま お悩み相談室」代表カウンセラー。 東洋医学で体を整え、カウンセリングで心に寄り添う「心身一如」のケアが信条。 FM845パーソナリティ。SNSフォロワー4万人超。著書『40歳からの幸せの法則』。
- 1. なぜこんなにイライラする?「更年期イライラ」の本当の要因
- 1.1. そのイライラは「性格」の問題じゃない!医学的なロジック
- 1.2. 東洋医学が語る「イライラの正体」は気の渋滞(気滞)だった
- 1.3. 更年期に「気滞」が起こりやすくなる理由
- 2. 更年期のイライラと漢方
- 2.1. あなたのイライラはどのタイプ?漢方で見る体質分類
- 2.1.1. カッとなって怒りが爆発するタイプ(気の高ぶり)
- 2.1.2. クヨクヨして不安が強いタイプ(血の不足)
- 2.1.3. 体力がありのぼせが強いタイプ(実熱)
- 2.1.4. 注意点
- 2.2. 漢方とセルフケアの「合わせ技」が更年期対策の鍵
- 3. イライラを今すぐ和らげる!東洋医学セルフケアのヒント
- 3.1. 滞った「気」を流す!ツボ押しで深呼吸を促す
- 3.1.1. 心の安定に意識されるツボ「合谷(ごうこく)」の場所を確認する
- 3.1.2. 気の流れに意識されるツボ「太衝(たいしょう)」の場所を確認する
- 3.1.3. 優しく刺激する
- 3.2. イライラを溜め込まない「呼吸法」と簡単な体の動かし方
- 3.2.1. ゆっくりと息を吐ききる「気のデトックス呼吸」
- 3.2.2. 肩甲骨と腕をゆるめる「気の巡らせ体操」
- 4. まとめ:まずはあなたの「ゆらぎの傾向」を整理しましょう
なぜこんなにイライラする?「更年期イライラ」の本当の要因
「イライラなんて、気の持ちようだ」「もっとポジティブに考えなさい」と誰かに言われたら、あなたはますます辛くなりますよね。
でも、安心してください。あなたの感情の起伏には、はっきりとした体のメカニズムが関わっています。
これは、「誰にでも起こり得る生理現象」の一つだと捉えてほしいのです。
そのイライラは「性格」の問題じゃない!医学的なロジック

更年期(一般的に閉経を挟んだ前後10年間)は、女性にとって非常に大きな体の変化が起きる時期です。
この時期に生じる不調は、主に以下の二つの連鎖によって引き起こされます。
- ホルモンの変動
- 自律神経への影響
閉経が近づくにつれて、女性の体を守り整えてきた女性ホルモン(エストロゲン)の量が減少していきます。
このホルモンの低下が起きると、脳(視床下部)は「もっとホルモンを出せ!」と指令を出し続けますが、卵巣がそれに応えられず、体内に大きなギャップが生まれてしまいます。
このギャップが引き金となり、脳の混乱が、体温調節・呼吸・心拍・感情などを無意識にコントロールしている「自律神経」のバランスを崩してしまいます。この時期は特に、興奮状態を生み出す交感神経が優位になりやすくなるのです。
交感神経が常に優位になっている状態は、例えるなら、車がアクセルを踏みっぱなしで走っている状態です。常に戦闘態勢にあるため、ちょっとした刺激でもカッとなったり、体が緊張しやすくなるのは、脳と体が混乱しやすい状態に近いということ。
感情がコントロールできないように感じるのは、あなたの頑張りが足りないからではなく、この生理的な自律神経の乱れが関係している状態なのです。
あなたは「自分がダメになった」と感じるかもしれませんが、それは、過酷な状況下であなたの体が必死に耐えている証拠です。
この事実を知って、まずはご自身を責める気持ちを解放してあげましょう。あなたは何も悪くありません。
東洋医学が語る「イライラの正体」は気の渋滞(気滞)だった

東洋医学は、心と体は常に一つであると考えます。
あなたのイライラを、「気(き)」「血(けつ)」「水(すい)」という視点から、さらに深く見ていきましょう。
- 感情と「肝(かん)」
- 気の渋滞(気滞)とは
- 隠れた「血(けつ)」の不足
東洋医学では、感情をコントロールする重要な役割を「肝(かん)」が担っていると考えます。
「肝」は、血を蓄えたり、エネルギーである「気」の流れをスムーズにしたりする、大切な機能を持っています。
更年期による心身の消耗や、現代社会のストレスによって「肝」の働きが乱れると、エネルギーである「気」の流れが滞ってしまうのです。
本来スムーズに流れるべき「気」が体内で渋滞(気滞)を起こすと、熱がこもった状態になったり、胸や脇が張ったり、そして怒りなどの感情と関連づけて考えられることがあります。
渋滞した「気」が熱を持つと、頭に血が上りやすくなり、怒りとして捉えられることがあるためです。
また、「血(けつ)」(東洋医学でいう栄養や潤いの元)が不足していると、精神を安定させる作用が弱くなり、不安感や不眠、そしてイライラがセットで現れることも少なくありません。
この「気の渋滞(気滞)」や「血の不足」こそが、あなたが感じている不調の根本的な背景の一つといえます。
これは「心のもちよう」ではなく、鍼やお灸、漢方などで整えることを目的として用いられる、東洋医学でそう捉えられる状態です。
東洋医学的な視点を持つことで、「自分のイライラの和らぐヒントが見つかるかもしれない」という安心感が生まれるかもしれません。
更年期に「気滞」が起こりやすくなる理由

更年期の時期は、この「気滞」と「血の不足」が同時に起こりやすい状態だと考えられています。
年齢とともに体のエネルギーを生み出す力がゆるやかに低下する一方で、家庭や仕事、人間関係など、心にかかる負荷は減らないままという方も多いでしょう。
その結果、気を巡らせる余力が足りなくなり、体の中に感情が溜まりやすくなってしまいます。
特に、責任感が強く、周囲に気を配る人ほど、自分の感情を後回しにする傾向があります。
「こんなことで怒ってはいけない」「私が我慢すればいい」と気持ちを抑え込むことが習慣になると、行き場を失った気が体内に滞り、ある日突然、イライラや怒りとして表に出やすくなることがあります。
これは性格の問題ではなく、心と体が限界に近づいているサインの一つと捉えることができます。
東洋医学では、このような状態を「巡りを整えてあげる必要がある段階」と考えます。
今のあなたに必要なのは、無理に感情をコントロールすることではなく、滞っている気や血の流れにそっと目を向け、少しずつゆるめていくことです。
背景を知ることで、「なぜこんなに辛いのか」が腑に落ち、自分を責める気持ちが和らぐきっかけにもなるでしょう。
更年期のイライラと漢方
「漢方が役立つかも」と思っても、種類がたくさんあってどれを選べばいいか迷いますよね。
漢方は、症状そのものを抑える西洋薬とは異なり、「あなたの体質(証)」に合わせて体全体のバランスを整えることが得意です。
そのため、あなたのイライラの「タイプ」を正しく見極めることが大切です。
あなたのイライラはどのタイプ?漢方で見る体質分類

東洋医学的な診断では、イライラの背景にある根本要因(気滞なのか、血虚なのか、熱なのかなど)を詳細に分析します。
カッとなって怒りが爆発するタイプ(気の高ぶり)
突発的な怒り・頭に血が上る・顔が紅潮する・胸や脇が張る感じがするなど、「気の高ぶり」が目立つ方には、乱れた「気」を巡らせ、こもった熱を冷ます目的として用いられることがある漢方が目安となります。
こうしたタイプの方のイライラは、気が発散できず、内側に閉じ込められている状態を示します。
⇒漢方の例:加味逍遙散(かみしょうようさん)など
クヨクヨして不安が強いタイプ(血の不足)
貧血気味・疲れやすい点不安感が強い・不眠があるなど、「血の不足」からくるイライラには、心身を栄養し、気持ちの安定をサポートする目的で使われる漢方が検討されることがあります。
このタイプの方は、体力が落ちているため、ちょっとしたストレスにも耐えられなくなっています。
⇒漢方の例:当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)など
体力がありのぼせが強いタイプ(実熱)
比較的体力があり、のぼせや不満感が強く、胃腸が丈夫な方は、興奮を鎮めることを目的とした漢方が候補になることもあります。
⇒漢方の例:抑肝散(よくかんさん)など
注意点
漢方は、あなたの体質や今の状態に合わせて細かく選ぶ必要があります。たとえ同じ「イライラ」の症状でも、体質によって選ぶ漢方は全く異なります。
ご自身の判断で安易に長期服用するのは避けて、必ず専門家(医師や薬剤師など)に相談して選ぶようにしてください。
特に、市販の漢方薬を試す場合でも、効き目や副作用を丁寧に観察することが重要です。
漢方とセルフケアの「合わせ技」が更年期対策の鍵

漢方が体の内側のバランスを整える手助けをしてくれる一方で、あなたの日常の習慣が「気」の流れを大きく左右します。
漢方薬に頼るだけでなく、体の外側から「気」の流れを意識的に整えるセルフケアを並行して行うことが、更年期の揺らぎを穏やかに乗りこなすための強い味方になってくれるでしょう。
「気」の渋滞は、ストレスや睡眠不足、運動不足、そして食生活の乱れによって悪化しやすいです。
日常生活の中でできるケアとして、私は鍼灸の施術とともに、自宅で簡単にできる体の動かし方や呼吸法をお伝えしています。
特に、体を動かすことは、滞った体の巡りを動かすきっかけになり、結果的に自律神経のバランスを整えるサポートになることも繋がります。
大切なのは、ハードな運動ではなく、気持ちいいと感じる程度に「体をゆるめて、気を流す」習慣を持つことです。
イライラを今すぐ和らげる!東洋医学セルフケアのヒント
あなたのイライラを少しでも早く穏やかにするために、誰にも知られずに、その場ですぐにできる東洋医学的なケア方法をご紹介します。
ケアをする際に大切なのは、頑張りすぎないことです。「完璧にやらなきゃ」とストレスになるくらいなら、やらない方がマシです。
体が「休息してほしい」「流れを良くしてほしい」と求めているサインだと受け止めて、優しくケアしてあげましょう。
滞った「気」を流す!ツボ押しで深呼吸を促す

イライラした時、自然と息が浅くなっていませんか? 呼吸と連動したツボを優しく刺激することで、気の流れと呼吸を整えます。
心の安定に意識されるツボ「合谷(ごうこく)」の場所を確認する
手の甲側、親指と人差し指の骨が交わるところからやや人差し指よりにあるくぼみです。このツボは、イライラや頭痛、肩こりなど、気の滞りからくる不調に対して、広く用いられることがあるツボです。
気の流れに意識されるツボ「太衝(たいしょう)」の場所を確認する
足の甲側、親指と人差し指の骨が合流する手前のくぼみにあるツボです。東洋医学でいう「肝」の働きを整え、「気」の巡りを意識する目的で用いられるとされています。イライラやストレスを感じた時に意識して押してみましょう。
優しく刺激する
強く揉むのではなく、「気持ちいい」「じんわり響く」と感じる程度の強さで、3秒押して3秒離すのを繰り返します。この際、必ず深い呼吸をしながら行ってください。息を吐く時に、イライラも一緒に体の外へ出ていくようなイメージを持つと、心地よさを感じやすい人もいます。
イライラを溜め込まない「呼吸法」と簡単な体の動かし方

東洋医学において「呼吸」は、体内に新しい「気」を取り込み、古い「気」を排出する、最も基本的な気の循環システムです。
ストレスで固まった体をゆるめ、滞りを和らげましょう。
ゆっくりと息を吐ききる「気のデトックス呼吸」
- 椅子に座ったままでOK。まず鼻から大きく息を吸い込み、お腹を膨らませます。
- 口をすぼめて、吸った時間の2倍くらいの時間をかけて、ゆっくり、静かに、体の中のイライラや余分な熱をすべて吐き出すイメージで息を吐ききります。
- これを5回繰り返します。
寝る前に行うのもおすすめです。
肩甲骨と腕をゆるめる「気の巡らせ体操」
肩甲骨の周りは、東洋医学で「気」の流れに関係すると考えられており、ツボが用いられることがある部位です。
この部分を動かすことで、自律神経と関わりが深いとされる部位の緊張をほぐすことへのアプローチも期待できます。
- まずは両肩を耳に近づけるようにグッと上げて数秒キープし、一気に「フッ」と力を抜いて落とします。
- 次に、両腕を大きく、ゆっくりと前後に回し、胸と肩甲骨をしっかりと動かします。
これにより、首・背中周りの緊張がほぐれ、滞りが和らぐきっかけになることがあります。
まとめ:まずはあなたの「ゆらぎの傾向」を整理しましょう

あなたの辛いイライラは、決して「性格のせい」でも「老化」でもありません。どうかご自身を責めるのはやめてください。
あなたの体が「少し休みたい」「バランスを整えたい」と送っている大切なサインです。
そして、そのサインの正体が、東洋医学でいう「気の渋滞」にあることをご理解いただけたかと思います。
漢方やツボ押し、体操など、様々な対策がありますが、闇雲に試すよりも、まずはご自身のゆらぎの傾向を客観的に整理することが、心の安定と正しいケアの第一歩になります。
「更年期」という言葉は、まだ受け入れたくない、怖いかもしれません。しかし、このセルフチェックは医学的な診断ではなく、あくまであなたの体の「状態の目安」を見える化するためのものです。
誰にも知られずに、たった3分であなたの心身の状態をチェックし、辛さの正体を見極めてみませんか?
診断結果は、あなたを救うための「楽になるためのヒント」です。一歩踏み出して、穏やかな自分を取り戻す準備を始めましょう。
