皆さんは「経穴(けいけつ)」という言葉を聞いたことがありますか?
少し難しい響きですが、実はこれ、皆さんがよく知っている「ツボ」の正式名称なんです。
- 「ここを押すと気持ちいいな」
- 「肩こりにはこのツボが良いって聞いたことがある」
そんな風に、なんとなく体に良さそうだと感じていても、実際に体の中でどうなっているのか、なぜ良いのかまでは知らない方が多いのではないでしょうか。
特に40代、50代と年齢を重ねると、病院に行くほどではないけれど「なんとなく不調」という場面が増えてきますよね。そんな時、自分の体のスイッチである「経穴」を知っていると、とても心強い味方になってくれます。
今回は、東洋医学の教科書に基づいて、経穴の仕組みや役割、そしてセルフケアのコツを鍼灸師の視点からわかりやすく解説します。
中森万美子鍼灸院 院長
鍼灸師・心理カウンセラー。「心身一如」を掲げ、東洋医学(体)と心理学(心)の両面から、40代以降の更年期・自律神経の悩みに寄り添う。
FM845パーソナリティや歌手としても活動し、その声と人柄はSNS総フォロワー4万人超に支持されている。著書『40歳からの幸せの法則』。

- 1. 経穴(ツボ)とは?東洋医学の視点で見る定義と仕組み
- 1.1. 経穴は「気・血(き・けつ)」が出入りする門
- 1.2. 全身に361個!経穴と経絡(けいらく)の深い関係
- 1.3. 「経穴」「奇穴」…ツボにも種類がある?
- 2. なぜそこを押すと良いの?経穴が持つ3つの重要な役割
- 2.1. 体からのSOSサイン!病気の「反応点」としての役割
- 2.2. 調子を整えるスイッチ!「施術点」としての役割
- 2.3. 内臓の状態を映し出す「診断点」としての役割
- 3. 自分で探してみよう!正しい経穴(ツボ)の場所と押し方
- 3.1. 経穴の位置は人によって違う?「骨度法」と「指量法」
- 3.2. 凹みや冷えを探すのがコツ?効果的な触れ方
- 3.3. 強く押せばいいわけではない!「補瀉(ほしゃ)」の考え方
- 4. 40代・50代女性の不調におすすめしたい代表的な経穴
- 4.1. 万能のツボ「合谷(ごうこく)」と「足三里(あしさんり)」
- 4.2. 女性特有の悩みに寄り添う「三陰交(さんいんこう)」
- 4.3. 自律神経を整えてリラックス「百会(ひゃくえ)」
- 5. ツボ押しだけじゃない!全身の巡りを良くする「経絡ストレッチ」
- 5.1. 点(経穴)だけでなく線(経絡)を伸ばすメリット
- 5.2. 呼吸と動きで「気」を巡らせる東洋医学的アプローチ
- 5.3. 更年期世代の体質改善に「たま式 養生経絡ストレッチ」
- 6. まとめ
経穴(ツボ)とは?東洋医学の視点で見る定義と仕組み

東洋医学において、私たちの体には「気(き)・血(けつ)・津液(しんえき)」という、生命活動を維持するためのエネルギーや栄養分、水分が巡っていると考えられています。
この「気」や「血」が流れる通り道のことを「経絡(けいらく)」と呼び、その経絡上にあって、気が身体の内外を出入りするポイントが「経穴(けいけつ)」、つまりツボです。
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経穴は「気・血(き・けつ)」が出入りする門
イメージしやすくするために、電車で例えてみましょう。
線路(経絡)は全身を網の目のように巡り、内臓や手足をつないでいます。その要所要所にある駅(経穴)は、エネルギーが出入りしたり、溜まったりする重要な場所です。
駅でトラブルが起きれば電車が止まってしまうように、経穴の流れが滞ると、そこにつながる内臓や体の部位に不調が現れると考えられています。
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全身に361個!経穴と経絡(けいらく)の深い関係
では、この「駅」は体にいくつあると思いますか?
一般的に「経穴」と呼ばれる場所は、全身に361個あります。
これらは適当に散らばっているわけではなく、14本の主要な経絡(線路)の上に並んでいます。
例えば、「手の太陰肺経(たいいんはいけい)」という経絡の上にある経穴は、呼吸器系(肺)と深い関わりを持っています。だから、腕にあるツボを押すことで、のどの調子を整えるといったアプローチができるのです。これが、離れた場所にあるツボが体に働きかける理由の一つです。
「経穴」「奇穴」…ツボにも種類がある?
実は、ツボにはいくつか種類があります。
- 経穴(けいけつ)14本の主要な経絡上にある、正式な361個のツボ。これを「正穴(せいけつ)」とも呼びます。
- 奇穴(きけつ)経絡の上にはないけれど、特定の症状に対して特別な効果があると経験的に認められているツボ。「奇」は「特別」という意味を持ちます。
- 新穴(しんけつ)近代になってから新しく発見され、位置や効果が定められたツボです。
この他にも、押すと「あ、そこ!」と感じるような痛みや気持ちよさがある場所(反応点)も、広い意味でのツボとして扱われることがあります。
なぜそこを押すと良いの?経穴が持つ3つの重要な役割

鍼灸師が施術を行う際、経穴は単なる「押すポイント」以上の意味を持っています。経穴には大きく分けて3つの役割があるのです。
体からのSOSサイン!病気の「反応点」としての役割
内臓や体のどこかに不調があると、それに関連する経穴に変化が現れることがあります。
- 押すと痛い(圧痛)
- 皮膚がカサカサしている
- そこだけ冷たい、または熱を持っている
- へこんでいる、または盛り上がっている
これらはすべて、体が発しているSOSサイン。「胃が疲れているよ」「冷えているよ」というメッセージが、経穴を通して体表に現れていると捉えることができます。
調子を整えるスイッチ!「施術点」としての役割
反応が出ている経穴は、そのままケアのポイントになります。
鍼(はり)やお灸、指圧などで適切な刺激を与えることで、滞っていた「気」や「血」の流れをスムーズにし、つながっている内臓や組織の働きを整えることが期待できます。
まさに、経穴は「調子を整えるスイッチ」と言えるでしょう。
内臓の状態を映し出す「診断点」としての役割
私たち鍼灸師は、患者さんの体を見る際、経穴の状態を指で触れて確認します(これを「切診(せっしん)」と言います)。
お腹や背中のツボの張り具合や弾力を見ることで、どの内臓が弱っているのか、体のバランスがどう崩れているのかを判断する手がかりにします。
自分で探してみよう!正しい経穴(ツボ)の場所と押し方

「ツボの場所が合っているか不安」という声をよく聞きます。実は、ツボの位置は人によって微妙に違います。
経穴の位置は人によって違う?「骨度法」と「指量法」
教科書には「手首から〇〇cm」とは書かれていません。人によって身長や手足の長さが違うからです。
東洋医学では、骨格を基準にする「骨度法(こつどほう)」や、自分の指の幅を使って長さを測る「指量法(しりょうほう)」(同身寸法)という方法を使います。
- 1寸(いっすん):親指の関節の幅
- 3寸(さんずん):人差し指から小指までの指4本分の幅(第2関節の高さ)
このように、自分の体を基準にしてツボを探します。ですから、あなたのツボを探す定規は、あなた自身の指なのです。
凹みや冷えを探すのがコツ?効果的な触れ方
おおよその場所がわかったら、その周辺を指の腹で優しく撫でたり、押したりしてみてください。
- 指がスッと入るような凹み
- コリッとした硬結(しこり)
- 押すとツーンと響くような感覚
こうした感覚がある場所が、あなたにとっての「反応が良いツボ」である可能性が高いです。教科書の位置はあくまで目安。「あ、ここだな」と感じる指先の感覚を大切にしましょう。
強く押せばいいわけではない!「補瀉(ほしゃ)」の考え方
「痛いほど強く押した方が効く」と思っていませんか? 実はそれは間違いです。
東洋医学には「補瀉(ほしゃ)」という原則があります。
補法(ほほう)
エネルギーが不足して弱っている時(虚の状態)。優しくじんわりと刺激して、気を補います。
瀉法(しゃほう)
余分なものが詰まっていたり、熱を持っている時(実の状態)。少し強めに刺激して、滞りを散らします。
40代以降の女性の不調は、エネルギー不足(虚)と巡りの悪さ(実)が混在していることが多いですが、セルフケアでは「痛気持ちいい」強さで、リラックスしながら行うのが基本です。
40代・50代女性の不調におすすめしたい代表的な経穴

ここからは、更年期世代の女性に特に知っておいてほしい万能ツボを4つご紹介します。
万能のツボ「合谷(ごうこく)」と「足三里(あしさんり)」
合谷(ごうこく)
手の親指と人差し指の骨が交わる部分の少し前の凹み。頭痛、肩こり、目の疲れ、歯の痛みなど、首から上の症状を和らげるのによく使われます。ストレスを感じた時にもおすすめです。
足三里(あしさんり)
膝のお皿の外側下にあるくぼみから、指4本分下がったところ。胃腸の働きを整え、足の疲れを取り、元気を補うと言われています。俳人の松尾芭蕉も、ここにお灸をして旅をしたことで有名です。
女性特有の悩みに寄り添う「三陰交(さんいんこう)」
足の内くるぶしの高いところから、指4本分上がった骨の際。
「肝・脾・腎」という3つの経絡が交わる場所で、冷え、生理のお悩み、更年期のほてり、むくみなど、女性特有のあらゆる悩みにアプローチできる、まさに「女性の味方」のツボです。
自律神経を整えてリラックス「百会(ひゃくえ)」
頭のてっぺん、左右の耳を結んだ線と、鼻から後頭部への線が交わるところ。
多くの経絡が会う場所という意味があり、自律神経のバランスを意識したい時や、頭痛、めまい、不眠、イライラを鎮めたい時におすすめです。
ツボ押しだけじゃない!全身の巡りを良くする「経絡ストレッチ」

「ツボの位置を探すのがやっぱり難しい」「361個も覚えられない」
そんな方におすすめしたいのが、点(ツボ)ではなく、線(経絡)全体にアプローチする方法です。
点(経穴)だけでなく線(経絡)を伸ばすメリット
経穴は、経絡という線路の上にある駅です。
一つひとつの駅(ツボ)をケアするのも大切ですが、線路(経絡)全体をストレッチでぐーっと伸ばしてあげれば、そこにある全ての駅に一度に刺激を与えることができます。
詰まりが取れ、全身の気血の巡りがスムーズになることが期待できます。
呼吸と動きで「気」を巡らせる東洋医学的アプローチ
ただ体を伸ばすだけでなく、東洋医学の「呼吸」と「意識」を組み合わせることで、心身への働きかけは深まります。
「気が巡っている」というイメージを持ちながら、ゆっくりと深く呼吸をして体を動かす。これだけで、気分が落ち着き、心も体もスッキリと軽くなります。
更年期世代の体質改善に「たま式 養生経絡ストレッチ」
私、たま先生が考案した「たま式 養生経絡ストレッチ」は、まさにこの理論に基づいています。
難しいツボの場所を覚えなくても大丈夫。40代〜60代の女性が無理なくできる動きで、経絡を効果的に刺激し、更年期特有の不調や冷え、疲れをケアします。
- 「自分の体と向き合う時間がほしい」
- 「薬に頼らず、自然な方法で元気になりたい」
そんな方は、ぜひ一度体験してみませんか?
まとめ

経穴(ツボ)は、あなたの体が発する声を聞き、整えるための大切な地図のようなものです。
「ここが痛いな」「冷えているな」と触れること自体が、自分の体をいたわる第一歩になります。
正しい知識でセルフケアを取り入れつつ、全身の巡りを良くする「経絡ストレッチ」で、年齢に負けない健やかな体を作っていきましょう。
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