「やらなきゃいけないのは、痛いほどわかってる。でも、どうしても体が動かない……」
あなたは今、そんなふうに自分を責めていませんか?
仕事の資料作り、試験勉強、溜まった家事、あるいは健康のためのダイエット。頭では「やるべき」と理解しているのに、スマホを見続けてしまったり、ベッドから起き上がれなかったりする。そして一日の終わりに「自分はなんてダメな人間なんだろう」と落ち込んでしまう。
もしそんな毎日を過ごしているなら、まずは深呼吸してください。
あなたが悪いわけではありません。それは、あなたの意志が弱いからでも、怠け者だからでもないのです。
実は「わかってるのにできない」という状態は、脳や心からの「SOSサイン」である可能性が高いのです。
この記事では、鍼灸師・心理カウンセラーの視点から、なぜ「わかってるのにできない」状態に陥ってしまうのか、その本当の原因と、無理なくできる対策についてお話しします。
自分を責めるのをやめて、少しずつ本来のあなたを取り戻していきましょう。
たま先生(中森 万美子)
「中森万美子鍼灸院」院長、「たま お悩み相談室」代表カウンセラー。 東洋医学で体を整え、カウンセリングで心に寄り添う「心身一如」のケアが信条。 FM845パーソナリティ。SNSフォロワー4万人超。著書『40歳からの幸せの法則』。
- 1. 「わかってるのにできない」は甘え?実は多くの人が抱える悩みです
- 1.1. 仕事、勉強、片付け…なぜ体が動かないのか
- 1.2. 自分を責める「自己嫌悪のループ」がさらに行動を止める
- 2. わかってるのにできない3つの原因【身体・脳の仕組み編】
- 2.1. 「前頭葉」の疲労がやる気スイッチをOFFにする
- 2.2. 自律神経の乱れによるエネルギー切れ(ガス欠)
- 2.3. 女性ホルモンの変動や更年期による不調
- 3. 心理的なブレーキかも?わかってるのにできない心の癖
- 3.1. 失敗を恐れる「完璧主義」が最初の一歩を重くする
- 3.2. 「〜すべき」という義務感がストレスを生む
- 3.3. ADHDなどの特性やアダルトチルドレンの影響
- 4. 今日から試せる「わかってるのにできない」状態への対策5選
- 4.1. 目標を「これ以上小さくできない」レベルまで下げる(ベビーステップ)
- 4.2. 脳を騙して動かす「5秒ルール」を活用する
- 4.3. スマホなどの誘惑を物理的に遠ざける環境づくり
- 4.4. まずは「寝る」!睡眠で脳のキャッシュをクリアにする
- 4.5. できたこと日記で自己肯定感を少しずつ回復させる
- 5. どうしても動けない時は「何もしない」が正解な理由
- 5.1. 休息はサボりではなく次へ進むための「充電」
- 5.2. 一人で抱え込まず専門家(カウンセリング・鍼灸)に頼る勇気
- 6. まとめ:「わかってるのにできない」今の自分を許すことから始めよう
「わかってるのにできない」は甘え?実は多くの人が抱える悩みです
「みんなは当たり前にできているのに、どうして自分だけできないんだろう?」
そう思っていませんか?
実は、私の運営する「たま お悩み相談室」でも、この「わかってるのにできない」というご相談はトップクラスに多いんです。年齢や職業に関わらず、非常に多くの方がこの葛藤を抱えています。
仕事、勉強、片付け…なぜ体が動かないのか
やるべきことを先延ばしにしてしまう心理には、実は「現状維持バイアス」という脳の機能が関係していることもあります。脳は変化を嫌い、今の状態(たとえそれが良くない状態であっても)を維持しようとする性質があるのです。
特に、タスクが難しそうに見えたり、手順が不明確だったりすると、脳はそれを「脅威」とみなし、防衛反応としてブレーキをかけてしまいます。つまり、体が動かないのは、脳があなたを守ろうとして過剰に反応している結果かもしれません。
自分を責める「自己嫌悪のループ」がさらに行動を止める
一番の問題は、動けないことそのものではなく、その後に「自分を責めること」です。
「またできなかった」「自分は意志が弱い」と自己否定を繰り返すと、脳には強いストレスがかかります。ストレスがかかると、やる気を司る脳の機能がさらに低下し、ますます動けなくなる……。
これが「わかってるのにできない」の正体、自己嫌悪のループです。
まずは「今は動けない時期なんだな」と、現状をただ認めることから始めましょう。
わかってるのにできない3つの原因【身体・脳の仕組み編】
精神論で解決しようとする前に、まずは「身体」と「脳」の状態を見直してみましょう。車もガソリンがなければ走れないように、人間もエネルギー不足では動けません。
「前頭葉」の疲労がやる気スイッチをOFFにする
人間の脳にある「前頭葉」は、理性を働かせたり、やる気を出したりする司令塔です。しかし、日々の決断やストレス、情報の浴びすぎによって前頭葉が疲弊すると、この司令塔がうまく機能しなくなります。
「わかってるのにできない」のは、前頭葉が「もう無理!これ以上判断できません!」とストライキを起こしている状態かもしれません。
自律神経の乱れによるエネルギー切れ(ガス欠)
鍼灸師の視点で見ると、この悩みを持つ方の多くは、首や肩がガチガチに凝っていたり、呼吸が浅くなっていたりと、交感神経(緊張モード)が優位になりすぎています。
常に気が張り詰めている状態が続くと、いざという時に使うエネルギーが枯渇してしまいます。これは「怠け」ではなく、完全な「エネルギー切れ(ガス欠)」です。
女性ホルモンの変動や更年期による不調
女性の場合、ホルモンバランスの影響は無視できません。生理前や更年期には、脳内の神経伝達物質が変動し、集中力が低下したり、意欲が湧かなくなったりすることが医学的にもわかっています。
「昔はもっとバリバリ動けたのに…」と感じているなら、それはあなたの性格が変わったのではなく、体のステージが変わった合図かもしれません。
特に40代以降の方で、理由のないイライラややる気の低下を感じている方は、更年期の影響も疑ってみてください。
「私のことかも?」と思ったら、一度簡単なセルフチェックで体の声を聞いてみましょう。
更年期診断|イライラ・不調はサイン?10の質問で今すぐセルフチェック
心理的なブレーキかも?わかってるのにできない心の癖
身体に問題がない場合は、心の奥にある「考え方の癖」がブレーキをかけているかもしれません。
失敗を恐れる「完璧主義」が最初の一歩を重くする
「やるからには完璧に仕上げなきゃ」「失敗したくない」
そんな思いが強すぎると、最初の一歩がとてつもなく重くなります。これを「完璧主義麻痺」と呼ぶこともあります。
100点を目指して動けなくなるより、30点でいいからとりあえず出す。これができるようになると、心はずっと軽くなります。
「〜すべき」という義務感がストレスを生む
「部屋は綺麗にすべき」「毎日勉強すべき」
この「べき思考」は、自分を縛り付ける鎖になります。「やりたい」ではなく「やらされている」と感じた瞬間、人のモチベーションは急激に下がります。
「〜すべき」を「〜したら気持ちいいかも」「〜できたらラッキー」と言い換えてみませんか?
ADHDなどの特性やアダルトチルドレンの影響
注意欠如・多動症(ADHD)などの発達特性がある場合、脳の特性として「先延ばし癖」が出やすい傾向があります。
また、機能不全家族で育ったアダルトチルドレン(AC)の方は、「自分には価値がない」という無意識の思い込みから、成功することや完了させることに恐怖を感じる場合もあります。
これらは個性や生育歴の一部であり、あなたが悪いわけではありません。自分の特性を知ることで、対処法が見つかることも多いのです。
今日から試せる「わかってるのにできない」状態への対策5選
原因がわかったところで、今のあなたでも無理なくできる、小さな対策をご紹介します。「これならできそう」と思うものだけ、一つ選んでみてください。
目標を「これ以上小さくできない」レベルまで下げる(ベビーステップ)
- 「部屋を片付ける」ではなく「ゴミを一つゴミ箱に捨てる」
- 「勉強する」ではなく「テキストを開く」
目標を極限まで小さくすることをベビーステップと言います。脳は「これくらいなら簡単だ」と判断すると、抵抗なく動き出せます。
そして不思議なことに、一度動き出すと「作業興奮」という作用で、意外と続けられるものです。
脳を騙して動かす「5秒ルール」を活用する
「あー、お風呂入らなきゃ…」と思ったら、思考が「めんどくさい」と言い訳を始める前に、
「5、4、3、2、1、GO!」
とカウントダウンして、反射的に立ち上がってしまいましょう。
これはメル・ロビンスが提唱した「5秒ルール」という有名なテクニックです。脳に言い訳させる隙を与えないのがコツです。
スマホなどの誘惑を物理的に遠ざける環境づくり
意志の力で誘惑に勝とうとしてはいけません。人間は誘惑に負けるようにできています。
スマホを別の部屋に置く、電源を切る、アプリにロックをかけるなど、物理的に「できない」環境を作りましょう。「わかってるのにできない」なら、「考えなくてもできる」環境を整えてあげるのが自分への優しさです。
まずは「寝る」!睡眠で脳のキャッシュをクリアにする
もし睡眠不足なら、どんなテクニックも効果を発揮しません。脳のゴミ(疲労物質)を掃除できるのは睡眠だけです。
「やることをやってないのに寝るなんて…」という罪悪感は捨てて、今日は泥のように眠りましょう。明日、スッキリした脳で取り組んだ方が、効率は何倍も上がります。
できたこと日記で自己肯定感を少しずつ回復させる
一日の終わりに「できなかったこと」ではなく「できたこと」を3つ書き出してください。
「朝起きられた」「歯を磨いた」「この記事を読んだ」。
どんなに小さなことでもOKです。加点法で自分を見る癖をつけることで、枯渇したエネルギーが少しずつチャージされていきます。
どうしても動けない時は「何もしない」が正解な理由
いろいろ試しても、どうしても動けない。そんな時もあるでしょう。
そんな時は、勇気を持って「何もしない」を選択してください。
休息はサボりではなく次へ進むための「充電」
動けないのは、あなたがサボっているからではありません。心と体が「充電が必要です!」と叫んでいるのです。
中途半端に自分を責めながらダラダラするのではなく、「今は休むことが私の仕事!」と割り切って、徹底的に休んでください。充電が完了すれば、自然と「何かしたいな」という気持ちが湧いてくるはずです。
一人で抱え込まず専門家(カウンセリング・鍼灸)に頼る勇気
もし、「わかってるのにできない」状態が長く続き、日常生活に支障が出ているなら、一人で抱え込まないでください。
身体の調整なら鍼灸が、心の整理ならカウンセリングが助けになります。誰かに話すだけで、驚くほど心が軽くなることもあります。
「たま お悩み相談室」でも、あなたのペースに合わせて、一緒に絡まった糸をほどくお手伝いをしています。
まとめ:「わかってるのにできない」今の自分を許すことから始めよう
「わかってるのにできない」
そう悩むあなたは、本当は「もっと良くなりたい」「ちゃんとしたい」という向上心を持った、とても真面目な方なのだと思います。
まずは、そんな自分を「よくやってるよ」と認めてあげてください。
できない自分を責めるのをやめた時、ふっと肩の力が抜けて、自然と次の一歩が踏み出せるようになります。
焦らなくて大丈夫。
あなたのペースで、少しずつ進んでいきましょうね。
